前回の報告 (09/22 2014)以後、 現在の CVS 版に入れられた主な機能について紹介します (ChangeLog, manual の更新部分等より)。
- 一般的な機能
- '+' による標本 plot で標本間隔をオプションで指定できるように (12/08)
- 点の記号では常に実線を使うように (12/08)
- 標本 plot で指定した標本変数と set log x の関係の問題の修正 (12/07)
- set link の逆関数のチェックに関する問題の修正 (12/01, 12/03)
- paxis の軸名 (内部変数) に関する問題の修正 (11/23)
- y 軸が対数軸の場合円オブジェクトの size 指定で起きる問題の修正 (11/21)
- show での表示ミスの問題の修正 (11/21)
- save で paxis の刻みと範囲が保存されていなかった問題の修正 (11/21)
- 従来の点線 (lt 0) と dashtype の整合性の問題の修正 (11/21)
- 負の時間データ用の時刻書式文字の %tH, %tM, %tS を新規導入 (11/06)
- -1 の dashtype が外部ファイルに出ないよう (11/04)
- データに NaN が含まれ、それを関数に渡した場合の処理の修正 (11/04)
- ソースコードの内部変数や C99 に関する修正など (11/02)
- data に対する部分範囲指定をすると警告を出すように (10/31)
- stats で matrix データの縦横の取り違えの問題、最大最小の問題の修正 (10/16)
- 対数軸で [1e-9:1e-6] の範囲の場合の刻みラベルの問題の修正 (10/11)
- save で最後に描画に使用したデータファイル名を書き出すように (10/08)
- call の ARG1 等が、if {}, do {} を使うと不正になる問題の修正 (10/07)
- unset format で numeric にするように (10/05)
- 新規: set format {axis} {time|geographic|numeric} (10/05)
- 新規: set {xyz}tics {time|geographic|numeric} (10/04)
- timecolumn() の引数が一つの場合 gnuplot 4 の挙動をするように (10/04)
- timefmt 処理の大幅な改良 (10/04)
- 不要になったパラメータの削除、ヒストグラムに関する修正 (10/01)
- 矢が陰線処理にかかったとき矢先は保持するように (10/01)
- fixed キーワードに関する順序依存の問題の修正 (10/01)
- set [*]tics {{no}enhanced} の追加 (09/26)
- mcsplines での補間点数を最低でもデータ点の 2 倍に (09/24)
- transparent キーワードに関する順序依存の問題の修正 (09/22)
- terminal ドライバ
- win: wgnuplot.ini がない場合のウィンドウサイズの初期化に関する修正 (12/08)
- post: 破線パターンを cairo, qt に合うように修正 (12/05)
- qt: cairo に合わせて定義済み破線パターンを追加 (11/25)
- gd: 点線描画を canvas.trm でも使われている破線パターンに改良 (11/21)
- wxt: -persist 時にツールバーを無効に (11/18)
- lua: \PackageError をより普遍的な \errmessage に (11/07)
- wxt: Copy-to-Clipboard オプションをツールバーに復帰 (11/04)
- cairo/wxt: enhanced 文字列に対するフォントの初期設定に関する修正 (11/01)
- wxt: Windows でリサイズでたくさんウィンドウが開かれる問題の修正 (10/31)
- wxt: ツールバーのクリップボードをファイルへの保存に変更 (10/30)
- lua: 文字列の枠囲み (boxed) のサポート (10/29)
- wxt: リサイズ時に replot で再描画するしないのチェックボックスを追加 (10/26)
- lua: 初期化に関する問題の修正 (10/19)
- lua: フォントテストの問題の修正 (10/16)
- win: size オプションはキャンバスサイズ、ウィンドウサイズは wsize で (10/16)
- lua: linetype -1 で実線にならない問題等の修正 (10/03, 10/11)
- svg: hypertext に関するバグの修正 (09/26)
- win: .ini ファイル等での線種指定をデフォルトでは削除 (09/24)
- win: pointsize 0 を受け付けるように (09/24)
- 古いドライバ aed.trm, v384.trm の削除 (09/24)
- lua: RGBA linecolor 等のサポート、term オプション linewidth の追加 (09/22)
- その他
- term/lua/gnuplot-tiz.help を make 時に生成するように修正 (11/12, 11/15, 11/16)
- デモ
- gantt.dem, world.dem: timefmt の改良に伴う修正 (10/04)
主なものは以下のような感じでしょうか。
- set [*]tics {{no}enhanced} の追加 (09/26)
- timefmt 処理の大幅な改良 (10/04)
- timecolumn() の引数が一つの場合 gnuplot 4 の挙動をするように (10/04)
- 新規: set {xyz}tics {time|geographic|numeric} (10/04)
- 新規: set format {axis} {time|geographic|numeric} (10/05)
- 負の時間データ用の時刻書式文字の %tH, %tM, %tS を新規導入 (11/06)
- wxt のツールバーの改良 (10/26, 10/30, 11/04, 11/18)
- '+' による標本 plot で標本間隔をオプションで指定できるように (12/08)
2., 3., 4., 5., 6. は、いずれも時間軸に関する改良です。 4., 5., の geographics は一時期 set *data のオプションでしたが、 今回 set *tics に変更され、それとともに numeric, time も新設されました。
2. は、主にデータ入力用の tics の型と出力用の tics の型が、 gnuplot 内部で分離して処理されるようになったことでしょうか。 4., 5. とももちろん関係します。 従来、は「set xdata time」とすると x 軸は「入力も出力も日時データ」になったのですが、 現在は「入力は日時データ、出力はデフォルトが日時データ」になるだけで、 出力側はその後で「set xtics numeric」とすれば 日時データモードを解除できるようです。
6. は、新しく導入されたもので、 主に負の時間 (1970-01-01 のエポック時以前) 用のもののようです。 ドキュメントには以下のように書かれています:
- %tH = エポック時への相対的な正負の時 (24 での巻戻しなし)
- %tM = エポック時への相対的な正負の分
- %tS = 直前の tH, tM 項目に対応する正負の秒数
そして、例えば秒数が -3672.50 の場合、それぞれ以下のようになる、 と記されています。
- set format x → "12/31/69 \n 22:58" (デフォルト)
- set format x "%tH:%tM:%tS" → "-01:01:12"
- set format x "%.2tH hours" → "-1.02 hours"
- set format x "%tM:%.2tS" → "-61:12.50"
いまひとつ使い道はわかりませんが、多少凝った処理をしているようです。
7. は wxt terminal のツールバーの改良です。以下にサンプルを示します (Solaris での wxt terminal 出力):
- wxt グラフウィンドウのサンプルスクリーンショット
このツールバーのアイコンは、左から、
「Copy plot to clipboard」 「Export plot to file」 (縦線) 「Replot」 「Toggle grid」 「Apply the previous zoom settings」 「Apply the next zoom settings」 「Apply autoscale」 (縦線) 「Open configuration dialog」 「Open help dialog」を意味しているようです。 「Export plot to file」では、出力ファイル形式を PNG か PDF か SVG かを選択できるようになっています。 また、「Open configuration dialog」を選択すると 以下のようなダイアログウィンドウが立ち上がります。
- wxt グラフウィンドウの対話型設定ウィンドウのスクリーンショット
8. は、以下のような感じのようです。
plot sample [a=0:360:10] '+' using (3+sin(a)):(cos(a)) with points
set angle degrees
plot sample [a=0:360] '+' using (a):(sin(a)) w lp,\
[a=0:360:10] '+' using (a):(sin(a)+0.5) w lp,\
[a=0:360:20] '+' using (a):(sin(a)+1.0) w lp
- 上のコマンドのグラフ
複数のグラフで '+' のサンプリングを変える、 というのは、with point などではもしかしたら便利かもしれません。
(cf. 「情報やメモ (01/26 2015)」)
11/12 頃に 5.0.rc3 がリリースされました。 これが最後の RC 版らしく、 いよいよ 5.0 正式リリース版が登場することになりそうです。 5.0.rc2 からの変更です。
- 新規: 軸の刻み型の設定用の新しいコマンド set {xyz}tics {timedate|geographic|numeric}
- 新規: 刻み型キーワードの追加: set format {axis} {time|geographic|numeric}
- 新規: 日時モードで日付でなく時刻を意味する書式変更子 't'
- 新規: wxt 出力形式のファイル出力用のツールバーウィジェット
- 変更: 入力書式 (axis->datatype) と出力書式 (axis->tictype) の分離
- 変更: 時間座標が適切な場合はそれを使用した x,y,z 座標の報告と保存
- 変更: バージョン 4 の timecolumn(<単一引数>) 書式のエミュレーション
- 変更: バージョン 5 の改良 "fit" 書式が -rc1, -rc2 に合っていなかった
- 変更: バージョン 4 形式の "fit" 書式の自動検出と受け付け
- 変更: 古い aed, v384 出力形式の削除
- 修正: "splot ... with dots" が点を描いていなかった問題
- 修正: -rc1 で導入された矢先の変更を元に戻す
- 修正: lua 出力形式で LT_NODRAW, RGBA 線色のサポート
- 修正: stats ルーチンが matrix データの x, y を混同していた
- 修正: cairo 出力ドライバで "set term" の :Italic, :Bold を受け付け
- 修正: $2 が NaN の場合、plot FOO using 1:(oops=f($2)) は oops に NaN を設定するように
意外に、RC3 の段階でも新規の機能がいくつか追加されています。
(cf. 「情報やメモ (01/06 2015)」)
09/22 ころに gnuplot-4.6.6 がリリースされました。 配布物に含まれる NEWS には、以下のように書かれています。
- 新規: "with lp" で点だけ描画するのに使える linetype のキーワード "nodraw"
- 新規: テキストデータファイルの先頭行をスキップする plot オプション "skip N"
- 新規: M-L 計算の前に fit パラメータを正規化する 'set fit prescale'
- 新規: svg 出力形式でグラフの描画が OFF の際 key エントリを灰色に
- 新規: "set datafile separator" でキーワード "comma", "tab" が使えるように
- 変更: "with image pixels" を "with image failsafe" の同義として使えるように
- 変更: 数値のデータを要求して文字列が見つかった場合は NaN を返すように
- 変更: 拡張文字列処理でフォント名の後ろの空白を一つしか消費しないように
- 変更: 左マウスクリックの反応を放したときでなく押したときに行うように
- 修正: gnuplot_qt プロセス終了時に早く復帰できるように
- 修正: 長い入力行の文字列データの O(N2) オーダーメモリ割り当ての解消
- 修正: 繰り返し変数の大きな値が条件チェック溢れを起こしていた問題
- 修正: object の fillcolor が現在の linetype の色と整合するように
- 修正: 64bit プラットフォームでの LFS のサポート (32bit では不可)
- 修正: 非軸データへの timecolumn() が落ちずにエラーを出力するように
- 修正: クリッピングが整数桁溢れを起こしていた問題
- 修正: *.csv ファイルの空フィールドで strcol(N) が segfault していた問題
- 修正: 長い key タイトルを収める key サイズの調整
- 修正: データ値として "NaN" を読んだときに "1/0" と同じ扱いをするように
- 修正: qt 描画ウィンドウが閉じるときに起こるイベントの処理
- 修正: 整数桁溢れによる繰り返しの失敗
- 修正: r 軸目盛りを現在の描画境界でクリッピングするように
- 修正: volatile データでの対数スケールの色軸
- 修正: qt 出力形式のマウスクリックと開放時のタイミングの問題
- 修正: ある [start:end:incr] の組のループ処理が不正になる問題
- 修正: y 座標が負か逆向き軸の rectangle の y の範囲とクリッピングの問題
- 修正: fit への入力の columnheaders の処理
- 修正: pdf.trm に strcpy(fontname,fontname) を避けるコードを追加
基本的に 4.6.5 の修正が主ですが、 多少新規機能も取り入れられています。 これが 4 系列の最後の版になる予定だそうです。
前回の報告 (06/13 2014)以後、 現在の CVS 版に入れられた主な機能について紹介します (ChangeLog, manual の更新部分等より)。
- 一般的な機能
- fit の unitweights をデフォルトに、それを選択する v4|v5 オプションを追加 (09/20)
- fit の xerrors オプションを削除、noerrors を unitweights に変更 (09/20)
- fit の仮変数の数を記録する変数を追加 (09/18, 09/20)
- データファイルのエラーに関するエラーメッセージの改正 (09/18)
- グラフの ON/OFF コマンド (新規): toggle {<plotno> | "plottitle" | all} (09/14)
- 時間軸でのマウス座標で起こる問題の修正 (09/12)
- fit に関係する変数の初期化に関する修正 (09/09)
- word(), words() で文字列内に引用符付き文字列を指定できるように (09/08)
- 引用符付きの色名を lc, fc の後ろに直接指定可能に (09/08)
- 文字点グラフ (pointtype '<文字>') の初期化/保存の修正 (09/07)
- set hidden3d 後の色指定が無視される問題の修正 (09/05)
- terminal 用 API の modify_plots() の拡張 (09/04)
- splot の with dots で点が表示されない問題の修正 (09/03)
- version 5 のデータ入力仕様の変更にともなう stat の修正 (08/31)
- stat に STATS_ssd (不偏標準偏差) を追加 (08/31)
- 「set object N lt <lt>」でエラーメッセージを出すように, (08/21)
- fit での columnheader の処理 (08/21)
- 矢先用の呼び出しをそれが必要なときだけ行うように (08/18)
(いくつかの問題により削除 09/04) - 黒色指定が破線パターン設定で変更される場合の問題の修正 (08/15)
- 矢先を強制的に実線で書くように (08/15)
- 破線パターンの save が行われない場合があった問題の修正 (08/15)
- 長方形の線種の適用のタイミングに関する修正 (08/15)
- デモ用の bf_test.c の他のソースへの依存性を排除 (08/15, 08/21)
- 逆向き軸や負の y 座標方向の長方形描画に関する問題の修正 (08/14)
- 不要なマウスイベントリセット命令を削除 (08/05)
- メモリリーク対策用に破線パターン文字列を静的割り当てに (08/02)
- textcolor lt の設定がユーザ定義線色設定と合ってなかった問題の修正 (08/02)
- pause mouse {button1|any} がキー割り当てに優先するように (08/01)
- 現在の出力形式のスケールを GPVAL_TERM_SCALE として提供 (07/30)
- 新キーワード: columnheaders, rowheaders (07/30)
- 新オプション: set mouse zoomfactors <xfactor>,<yfactor> (07/23)
- 極座標での角度の範囲外の処理の修正 (07/22)
- set style increment user を使えるように (07/14)
- for [st:en:inc] が st > en の場合に 1 回実行される問題の修正 (07/12)
- set dummy が ; で切れていなかった問題の修正 (07/10)
- set xtics () で、ユーザ定義 xtics をクリアするように (07/06)
- 出力形式が白黒属性の場合に色指定をすべて黒要求とするように (07/01)
- 新コマンド: set margins <left> <right> <top> <bottom> (06/24)
- 直前の fit の繰り返し回数を保持する FIT_NITER の追加 (06/16)
- 極座標モードの r 軸の目盛が描画境界を越える問題の修正 (06/16)
- MS-Windows の -persist 時のパイプ入力での問題の修正 (06/15)
- MS-Windows での LFS のサポート (06/14)
- 新しいオプション: "exit error 'message'" (06/14)
- call の引数にかっこ付きの数式が書けるように (06/14)
- 対数軸が色軸 (cb) には適用されていない場合があった問題の修正 (06/14)
- terminal ドライバ
- win: toggle コマンドのサポート (09/18)
- win: pause ボックスが閉じた後にさらにイベントを待つ問題の修正 (09/09)
- x11: マルチバイトフォント、パイプ関係の条件コンパイルの修正 (08/21)
- emf: 点線/破線パターンを linewidth に合わせてスケーリングするように (08/20)
- cairo/wxt: 点線/破線パターンのスケールに関する修正 (08/20)
- x11: マルチバイトフォントの呼び出しリストの利用 (08/15)
- x11: -noevents に関するヘルプの記述を削除 (07/30)
- cairo/wxt: cairo ライブラリに 0 の線幅を渡さないように (07/28)
- x11: 点線/破線パターンを linewidth に合わせてスケーリングするように (07/25)
- qt/wxt: MS-Windows 上で wxt, qt が同時に使えるように (07/04)
- win: q でグラフウィンドウが閉じるように (07/04)
- cairo/wxt: show term で enhanced の状態を常に表示するように (07/01)
- qt: Windows 上でパイプが効かなかった問題の修正 (06/13)
- その他
- configure に --without-libcerf オプションを追加 (09/08)
- ヘルプ用の画像スクリプト (plotsytles.gnu) の Windows 用の修正 (09/05)
- OS2 用のコンパイル環境の修正 (strtoll) (08/30)
- 開発版のバージョンが 5.1.0 に (08/21)
- MinGW 用の Makefile の修正 (08/18)
- バージョン文字列に MS-Windows の 32/64 ビット表示を追加 (07/28)
- make check 時に GNUPLOT_X11 のリンクを作らないように変更 (07/18)
- Qt5 に関する configure の修正 (06/15)
- デモ
- demo/fit.dem: noerror を削除、xyerrorbars のデモの追加 (09/20)
- demo/stringvar.dem: word(), words() の引用符付き文字列のデモの追加 (09/08)
- demo/rectangle.dem: 逆向き軸や負の y 座標方向の長方形描画を追加 (08/14)
- demo/heatmaps.dem: columnheaders, rowheaders 用のデモ (07/30)
- demo/poldat.dem: trange の設定の修正 (07/22, 07/23)
- demo/callargs.dem: かっこ付き引数のテストを追加 (06/14)
前回の報告から 3 ヶ月も経ってしまいましたので、 だいぶたまっていますが、 ここで報告しているもののほとんどは 5.0rc1, 5.0rc2 へもマージされていますので、 次期正式版である 5.0 にも実装されると思います。
5.0rc1, 5.0rc2 へのかけこみ実装もかなりあるようですが、 めぼしいものは以下のような感じでしょうか。
- call の引数にかっこ付きの数式が書けるように (06/14)
- 新しいオプション: "exit error 'message'" (06/14)
- 新コマンド: set margins <left> <right> <top> <bottom> (06/24)
- 新オプション: set mouse zoomfactors <xfactor>,<yfactor> (07/23)
- matrix の新キーワード: columnheaders, rowheaders (07/30)
- 矢先を強制的に実線で書くように (08/15)
- fit での columnheader の処理 (08/21)
- stat に STATS_ssd (不偏標準偏差) を追加 (08/31)
- 引用符付きの色名を lc, fc の後ろに直接指定可能に (09/08)
- word(), words() で文字列内に引用符付き文字列を指定できるように (09/08)
- グラフの ON/OFF (新規): toggle {<plotno> | "plottitle" | all} (09/14)
- fit の xerrors オプションを削除、noerrors を unitweights に変更等 (09/20)
1. は、例えば call のパラメータとして、3.5 のような直接の数字でなくても、
a = 3.2
b = -4.3
call "sub.gp" (a+b) (a-b)
この場合、もちろん (a+b) を
"(a+b)" とすると
ARG1 が「(a+b)」という文字列になりますが、
しかしそれも sub.gp 内で @ARG1 として展開するように使えば、
正しく -1.1 を表してはくれます。
このマクロ置換は、従来も使えていましたが、
それが今回マクロ置換によらずに数式で値を指定できるようになった、
ということのようです。
2. は、exit error 'message'
を入れたところで疑似プログラムエラーとなり、
'message' をエラーメッセージとして出力した後、
対話型 terminal ではすべてのループ、call などを中断して
コマンドラインに戻ります
(非対話型 terminal ではプログラムを終了)。
デバッグなどに使えるんでしょうか。
3. は、今まで lmargin, rmargin, tmargin, bmargin と 4 つの set を行っていたものを、簡単に一つにするものです。 もちろん従来の set lmargin 等も残されています。
4. は、すでに 「情報やメモ (07/24 2014)」 で報告ずみです。
5. は、テキストの matrix データが列ラベルや行ラベルを持つ場合に、 それをスキップするためのキーワードです。 ヘルプには以下のような例が載っています:
$DATA << EOD
xxx A B C D
aa z11 z12 z13 z14
bb z21 z22 z23 z24
cc z31 z32 z33 z34
EOD
plot $DATA matrix columnheaders rowheaders with image
6. は、矢軸を点線/破線指定した場合に 矢先の境界線まで点線/破線にならないように、ということでしょう。
7. は、現在はデータの先頭行に書いた名前 (columnhead) を using 指定に使えるようになっていますが、 fit の場合にそれを使うと問題が起こる場合があった、 ということのようです。
8. は、(平方和)/N の平方根である標本標準偏差は STATS_stddev でありましたが、 今回 (平方和)/(N-1) の平方根である不偏標準偏差を STATS_ssd として追加した、ということです。
9. は、linecolor や fillcolor などに色名を指定する場合、
従来は「linecolor rgb "red"」のように
'rgb' というキーワードが必要でしたが、それが不要になったということで、
「linecolor "red"」のように
直接色名を指定できるようになっています。
10. は、word(), words() で指定する文字列引数の文字列内に、 引用符を入れた文字列が指定できるようになった、ということです。 ヘルプには以下のような例が載っています:
print words("\"double quotes\" or 'single quotes'") # 3
ただし、少し特殊なルールがあり、文字列内の開始引用符の前は、 スペースか文字列の先頭でなければいけない、となっています。 逆に言えば、そうでない引用符は引用符の開始であるとはみなされない、 ということです。ヘルプには以下のような例が載っています:
print words("Alexis' phone doesn't work") # 4
11. は、現在多くの対話型 terminal がサポートする、
key エントリの上でマウス左クリックにより特定のグラフの表示を
ON/OFF する機能を、コマンドとして実装したものです。
グラフの番号、グラフタイトルなどを指定して実行することが可能ですが、
「toggle "ti*"」のようにすると
ti で始まるタイトルを持つ最初のグラフが対象となる、
という仕組みも持っているようです。
プレゼンなどでは使えるかもしれません。
12. は、fit の noerrors を unitweights に変えてそれをデフォルトにしています。 よって、今まで noerrors をつけていたものが不要になります。 ただし、この辺りの書式が多少以前のものとは変わってきているため、 今回 set fit のオプションとして v4 (version 4 互換), v5 (version 5 互換) のようなものも追加されました。 なんとなく一時的なもののような気がしますが、 移行期には必要かもしれません。
先日 (08/28) gnuplot-5.0.rc2 が公開されました。 5.0.rc1, 5.0.rc2 が 4.6.5 に比べてどのような機能を持っているかは、 NEWS というファイルに書かれています。以下にその訳を紹介します。
まずは 5.0.rc1 (gnuplot 5.0 での新しい機能、変更、修正) です。
- 新規: 任意の線の点線/破線属性を分離して制御できるように
- 新規: 点線/破線パターン (dashtypes) のカスタマイズ
- 新規: LFS (large file support) データファイルのサポート
- 新規: timecolumn(col,'timeformat') に第 2 パラメータ (書式) を追加
- 新規: `set view map {scale}' で 3 次元射影描画のサイズ変更が可能に
- 新規: 線描画の抑制キーワード `nodraw` (例えば style linespoints で)
- 新規: 拡張文字処理モードでの bold/italic 指定
- 新規: ビットシフト 2 項演算子 <<, >>
- 新規: stat での歪度 (skewness)、尖度 (kurtosis), 標準誤差
- 新規: プラグイン関数 ('import f(x) from "plugins.so"')
- 新規: すべての入力列のテーブル化オプション "set table; plot ... with table"
- 新規: 区分的単調 3 次スプラインによる平滑化オプション mcsplines
- 新規: 履歴の第 N エントリのコマンドを再実行する 'history !N'
- 新規: 'set history {size <N>} {quiet|numbers} {full|trim} {default}'
- 新規: 各描画要素毎に別々に範囲指定することによる区分的関数の描画
- 新規: 24 bit RGB 値を生成する関数 hsv2rgb(H,S,V)
- 新規: 描画タイトルをグラフの各曲線の先に置くことができるように
- 新規: インラインデータを名前付きデータブロックとして再利用できるように
- 新規: 'set print|table $datablock' で名前付きデータブロックへの出力 (保存)
- 新規: マウスを上に乗せることで表示するハイパーテキストラベル
- 新規: 地理座標データ軸 (度、分、秒)
- 新規: set arrow <tag> from <start> length <len> angle <ang>
- 新規: 矢 (arrow) のスタイルキーワード noborder, fixed
- 新規: RGB 色の上位ビットをアルファ値 (透過) として扱えるように
- 新規: 'set surface explicit' で曲面の格子の自動生成を無効にできるように
- 新規: 'set link [x2|y2]' で 2 軸の範囲を 1 軸に連結させる
- 新規: 'set link x2 via f(x) inverse g(x)' で一般の非線形軸を作れるように
- 新規: 3 次元描画の射影モードでリンクした軸を x2, y2 軸ラベルの配置に使えるように
- 新規: 'set key opaque' を 3 次元描画でも使えるように
- 新規: x11 terminal がウィンドウのアスペクト比を考慮するように
- 新規: x11 terminal でキーのマウス左クリックでグラフの ON/OFF ができるように
- 新規: post terminal で埋め込み画像のサイズ縮小に /FlateDecode が使えるように
- 新規: 'set fit quiet|results|brief|verbose' で fit のメッセージ出力制御
- 新規: fit でユーザ変数の最終共分散値を保存できるように
- 新規: fit で独立変数の誤差を考慮に入れるように
- 新規: 'set multiplot next/previous'
- 新規: 'set contours; splot FOO with labels' で等高線上にラベルを置けるように
- 新規: ユーザ指定軸刻み (tics) のレベルの追加
- 新規: libcerf (使える場合は) からの数学複素関数: cerf, cdawson, erfi, faddeeva
- 新規: スクリーン上のすべてのグラフの ON/OFF のホットキー i/v/V
- 新規: 極座標軸の小目盛 'set mrtics'
- 新規: 'reset session'
- 新規: call の引数仕様 ARGC, ARG0 ARG1 ... ARG<ARGC>
- 新規: シェル的な呼び出し: gnuplot -c scriptfile ARG1 ARG2 ARG3
- 新規: %g に似ているが指数で LaTeX あるいは拡張文字処理を使用する書式 %h
- 新規: LaTeX 系 termnal で軸の刻みラベルに数式モードを使用するように
- 新規: MS-Windows でスクリプトや fit の中断に、コンソールモード gnuplot では Ctrl-C が、wgnuplot では Ctrl-Break が使えるように
- 新規: GDI+ を使った高速な win terminal が使えるように
- 新規: テキストデータファイルの開始位置を指定する plot のオプション "skip N"
- 新規: 対話型カラー文字表現 terminal "caca"
- 変更: 標準入力の入力待ちでないときでもマウスイベントを処理するように
- 変更: マウスホイールと +/- キーによる現在のマウス位置を中心とするズーム
- 変更: 追加データ列でなくキーワードによる kdensity バンド幅の提供
- 変更: wgnuplot でのパイプ (popen/pclose) エミュレーション
- 変更: 'set [xyz]axis ... reverse' が自動縮尺のみに作用するように
- 変更: 入力データ列での NaN の処理の改良
- 変更: 後方互換性ビルドオプション (v4.0 から非推奨のもの) の削除
- 変更: データ行の先頭行の有効な列数をファイルのすべての行の解釈の決定に利用
- 変更: Automake 1.12 で C プロトタイプが必ず必要に
- 変更: 順序依存性は低いが永続的でありうるバイナリ描画オプション
- 変更: gprintf の書式 %L が線形軸でも機能するよう対数軸の底を非ゼロ値として残す
- 変更: 時刻計算を 2000 年からでなく標準的なエポックの 1970 年 1 月 1 日からに
- 変更: fit オプションを FIT_ 変数の代わりに `set fit` で制御するように
- 変更: fit のデフォルトメッセージを要約された 1 行ずつのレポートに
- 変更: fit がデフォルトでパラメータをあらかじめスケールするように
- 変更: 従属変数、独立変数の誤差を指定するための新しい fit の書式
- 変更: CVS ファイルの空フィールドを不正値でなく欠損データとするように
- 変更: DOS 形式の *.csv ファイルが読めるよう入力データ行から \r を取り除くように
- 変更: 多角形クリッピングと filledcurve 用の Sutherland-Hodgman アルゴリズムの使用
- 変更: fit の次元の最大値を 5 から 12 へ
- 変更: pgnuplot をもうバイナリ配布には入れないように
- 変更: Airy 関数の (より高精度な) 新しい実装
- 変更: 可能な場合は call の引数を文字列を生成するよう評価
- 変更: より高速なレンダリングを可能にする qt5 を使用するよう qt ドライバを改良
- 変更: gnuplot-mode (emacs 用) を別のプロジェクトで保守するように
- 変更: impulse グラフの自動縮尺が y=0 まで延長するように
- 変更: object の境界が点線/破線や他の線属性を持てるように
- 修正: サーバの接続が失しなわれた場合 ^C を二度打つと強制的に wxt を終了
「新規」が 50 個、「変更」が 27 個、「修正」が 1 個と、 さすがに「新規」がかなりあります。
次は 5.0.rc2 (5.0.rc1 からの変更) です。
- 新規: 対応するグラフが OFF になっている場合 key エントリを灰色にするように
- 新規: call 引数でかっこ付き数式を書けるように
- 新規: set margins <left>, <right>, <top>, <bottom>
- 新規: 極座標モードの入力データ用の set trange [theta_min:theta_max]
- 新規: set mouse zoomfactors <xfact>,<yfact>
- 新規: テキストデータの新しい matrix キーワード: columnheaders, rowheaders
- 変更: "set key {no}enhanced}" を key タイトルにも適用するように
- 変更: dashlength を linewidth に合わせて伸縮させるように
- 変更: 左マウスクリックをボタン放しでなくボタン押しで反応するように
- 変更: bf_test が他の gnuplot ファイルやライブラリへ一切依存しないように
- 変更: 描画の際ではなく "set obj" の間にデフォルトの rectangle スタイルを適用するように
- 修正: wxgtk3 では Xthreads の初期化が必要
- 修正: 複数列の key 内の長い key タイトルの幅合わせ
- 修正: NaN として読んだデータ値を 1/0 に対するものと同じように扱うように
- 修正: 3 次元描画での文字型点種の実装
- 修正: terminal オプション配列で長い文字列 (例えば epslatex_header) を保存しない
- 修正: qt 初期ウィンドウののリサイズが OSX, Debian で引き起こす問題
- 修正: qt 描画ウィンドウを閉じることが起こすイベントの処理
- 修正: 対数軸 colorbox の描画の refresh
- 修正: MS-Windows でのパイプの問題
- 修正: terminal が白黒モードの際の色指定を黒に変換
- 修正: ユーザ定義線色 (linecolor) を文字色にも適用するように
- 修正: y が負、あるいは逆向き軸での rectangle のクリッピングと y の範囲
- 修正: rectangle, arrow (またはその他) での dashtype のバグ
こちらは rc1 からの修正が主ですから、 「新規」は 6 個、「変更」は 5 個、「修正」が 13 個となっています。
5.0 の正式リリースは、9 月と予定されていましたが、 rc2 は 1 月ほど予定が遅れましたので、10 月位になるでしょうか。
(cf. 「情報やメモ (01/06 2015)」)
「情報やメモ (08/07 2014)」 で紹介した、 x11 terminal でフォントが見つからない場合用のパッチですが、 めでたく本家に採用されたようです。 よって、多分今後の CVS 版と 5.0rc2 位からはこの問題は解消されると思います。
「情報やメモ (07/25)」, 「情報やメモ (07/30 2014)」 等にあげた 2 つの問題について、 パッチを書いてみましたのでここで紹介しておきます。
まずは、「情報やメモ (07/25)」 の軸のラベルが変だという問題ですが、 これは元々、軸の目盛の値に対して その範囲が狭すぎる場合に対する「対処」が原因です。
例えば、[1:1+2e-2]、すなわち 1.00≦x≦1.02 という範囲の場合、 目盛のラベルは
1, 1.005, 1.01, 1.015, 1.02になりますが、[1:1+2e-6]、すなわち 1.000000≦x≦1.000002 という範囲の場合、 本来の目盛は
1, 1.0000005, 1.000001, 1.0000015, 1.000002なのですが、tic format のデフォルトの「%g」(CVS 版では「%h」) で出力すると、有効数字桁がデフォルト幅を越えているので、 短い有効数字幅で四捨五入され、0 で終わる小数部分も省略されるので、 すべてのラベルが「1」になってしまいます。
その問題への「対処」として、 軸の範囲指定が狭くて、かつその軸の set format が指定されていない場合は、 その最後の桁が出力できる精度の「%.[n]f」を ラベルに強制的に適用するようになっていました。 しかも、小数部分の表示幅 [n] は、範囲幅 (上の例だと 2e-6) と同じ精度に設定されるので、 上の目盛ラベルの 2 つ目と 4 つ目の小数 7 桁目は四捨五入されてしまい、
1, 1.000001, 1.000001, 1.000002, 1.000002のようになります (これはまあある意味で仕方ないかと思います)。
しかし、最上位桁が 0、すなわち目盛ラベルの有効数字が 2 桁くらいしかない場合でも同じ「対処」が利用されてしまっていたのが 「情報やメモ (07/25)」 の問題です。 実は、[1e-6:3e-6] のような場合であっても ほぼ範囲指定幅だけを見て同じ挙動が取られていました。 ただ、「(範囲の最小値)×(最大値)＞0」の場合にだけやる、 という対処が gnuplot-4.6.1 で入っていて、 それで 4.6.1 からは [0:2e-6] の場合には この問題が起きないようになっていました。
作成したパッチ (src/axis.c へのパッチ) は、 多少場当たり的ですが、 範囲の最小値か最大値の絶対値が 1 以上である場合、 すなわち整数部分が 0 でない場合にこれをやるようにしてみました。 これにより、[1e-6:3e-6] や [0:2e-6] はいずれも 「%g」(CVS 版では「%h」) が利用されることになります。
もちろん、[0.1:0.1+2e-7] のような場合は どうするかという問題はありますが、 これは、実は x 軸か y 軸かでも違う問題がありますし (x 軸だと長い桁のラベルは重なってしまう)、 「1」と「1.0001」が同居するよりは「1.0000」と「1.0001」とすべきでは、 などの問題もありますから、 よほど気になる人は結局自前で set format や set xtics などで書式指定、回転指定などを手動で行うべきでしょうから、 デフォルトの対処としては、とりあえずこの程度が適当かなと感じています。
次に、 「情報やメモ (07/25 2014)」, 「情報やメモ (07/28 2014)」, 「情報やメモ (07/30 2014)」 に上げた、x11 terminal でフォントが見つからない場合に 連続描画が遅くなる問題の件ですが、 これは現象や理由は 「情報やメモ (07/30 2014)」 で報告した通りで、それを改善するため、 検索済みのものをリストに残している部分に、 マルチバイトフォント (XFontSet) も便乗して残すパッチ (src/gplt_x11.c へのパッチ) を書いてみました。
とりあえず手元では、問題は解消しているようです。 両者ともに本家には投稿ずみですが、 次の 5.0 に採用されるかどうかはまだ未定です。
なお、予定では、5.0.rc2 が 7 月、 5.0 正式版のリリースは 9 月のようでしたが、 若干遅れているようで、 8 月に入りましたが rc2 はまだ出てないようです。
(cf. 「情報やメモ (08/18 2014)」)
「情報やメモ (07/25 2014)」, 「情報やメモ (07/28 2014)」 に書いた、
「gnuplot-4.6.X では x11 terminal でフォントが見つからない場合、遅くなっているのかも」の件ですが、CVS 版の gnuplot で試してみたら 英文フォントの場合はフォントが見つからなくても速く動作しました。 しかし、和文フォント (mbfont:) の場合はフォントが見つからないと 遅いままです。
そこで調べてみたところ、gnuplot_x11 ドライバに、 英文フォントの検索に関しては、 以前の検索をリストにして残している改良が入っていることがわかりました (2012 12/25 頃)。 しかし和文フォント (mbfont:) には 残念ながらそういう仕組みが用意されていないため、 mbfont: でフォントが見つからないときは遅いままになっています。
時間のあるときにその辺りの改良を考えてみたいと思います。 よって、とりあえず現在の CVS 版 (多分 5.0rc1 も) では、
- X11 用のフォントとして mbfont: を使用していなければ 速く動作するはず
- mbfont: を使用している場合は、フォントがちゃんと見つかれば 速く動作するはず
ということになっていますので、 mbfont: を使う場合は正しいフォントを設定してみてください。
なお、上の CVS 版への修正は、 時期からすれば gnuplot-4.6.2 の公開前なのですが、 4.6.X 系列には取り入れられていません。 よって、4.6.X 系列では英文フォントでも和文フォントでも、 フォントが見つからない場合は動作が遅くなります。
(cf. 「情報やメモ (08/07 2014)」)
2 ちゃんねるの掲示板「gnuplot を使おう。その 3」(アドレスは リンクリスト 参照) に書かれた情報について、 多少気になるものがありましたので、 少し書いておきます。
-
smooth csplines によるスプライン補間の近似式はわからないのか、 という質問がありました (345)。
それに対して、ヘルプを読む限り近似式を求める方法はない、 計算は難しくないから自力で係数を決めたら、 近似曲線を使いたいならスプライン補間ではなく fit を使うべきでは、 といった回答がありました。
ほぼ回答の通りだと思いますが、少し補足します。 cspline による 3 次スプライン補間は「1 本の数式」による補間ではなく、 区間毎に異なる数式 (3 次式) を利用した補間です。 よって、例えば 100 個のデータ点があれば、 各隣接点の間をそれぞれ別な 3 次式で近似するので、 合計 99 本の 3 次式 (係数は 4 x 99 = 396 個) による近似になります。
その係数は、すべてのデータ点から連立方程式によって求めるので、 確かによほど点の数が少なくない限り手計算で求めることは難しいでしょうが、 その係数すべてがわかっても、 「データの近似式を得た」という感じではないと思います。 近似式としては折れ線 (1 次式) でつないだものを 「見た目の角を取って丸くした」といった程度の意味しかありません。 むしろ「近似式」という意味では、1 本の数式で近似する fit (非線形最小自乗法) を使うべきでしょうし、 「近似式」という意味ではスプラインより折れ線近似 (線形補間) の方が より自然かもしれません。
しかし、例えば「科学的な実験のデータ」とは異なる、 例えばデザインなどの分野で純粋に滑らかな曲線の数式が欲しい、 という目的であれば話は別だと思います。 実際に、スケーラブルフォントのデザインでは スプラインやベジェといった補間曲線が良く利用されています。 ただ、gnuplot 自体は、その係数や数式を内部には持つものの、 それを外部には出力しませんので、 回答にも上がっていましたが、 そういう計算が行える Octave や SciLab のような数式処理ソフトを 利用して係数を計算させるのがいいだろうと思います。 もちろん、gnuplot はオープンソースですから、 ソース (src/interpol.c) を改変すれば、 係数を出力させることも不可能ではありません。
-
pdfcairo terminal でイタリックフォントは使えますか、 という質問がありました (355)。
「使える」だけの回答がありましたが、 cairo は fontconfig ベースなので、 どうやったらイタリック指定できるのかわからない、 ということかもしれません。 fontconfig だと、指定したフォントが見つからないと 代用フォントが使われてしまうので、 うまく指定しないと「使えない」と見えてしまうのかもしれません。 実はわたしもよくはわかっていないのですが、 例えば以下のような感じで使えるようです。
- fc-list コマンドで フォント名の後ろに「style=Italic」と書かれているフォントを探す
- そのフォント名 (空白は - に変える) の最後に 「-Italic」を追加したフォント名を指定する
フォント名の空白を - に変える必要はないかもしれませんが、 enhanced モードでのフォント指定などでは問題も起きますので、 空白は - に変えるといいでしょう。 多分 fontconfig ならあまり違いはないと思います。 実際、fc-list で「Courier New:style=Italic」という行があったので、 ついでに「Courier New:style=Bold Italic」も利用する形で
のように指定して PDF ファイルを出力させて、 その PDF ファイルのフォントを調べたら「CourierNewItalic」と 「CourierNewBoldItalic」が使われていることが 確認できました (gnuplot-4.6.5)。set term pdfcairo font "Courier-New-Italic,20"
set title "SIN(X)" font "Courier-New-Bold-Italic,30"
...なお、このイタリック (斜体) やボールド (太字) 指定は、 新しい 5.0 (および現在の CVS 版) では、フォント名の最後に 「:Italic」「:Bold」「:Bold:Italic」 のように追加する形式になっています:
マニュアルでは、enhanced モードでの使用例のみあげてありますが、 通常のフォント指定も上のようにできるようです (4.6.X 系列では不可)。 現在のフォントの Italic, Bold 等の属性のみを変更したい場合には便利でしょう。set term pdfcairo font "Courier-New:Italic,20"
set title "SIN(X)" font "Courier-New:Bold:Italic,30"
... -
' と " はどう使い分けていますか、という質問がありました (359)。
回答はありませんでしたが、基本的にはオンラインヘルプの 「help quotes」に書かれている通りで、 \ による特殊文字表現や、文字列内のコマンド置換 (`` による置換) を使いたければ " で囲みます。 " 内で \ を使いたい場合は \\ としなければいけません。
私はさらに gnuplot スクリプトをシェルスクリプトのヒアドキュメントとして 書くことが多いので、 その場合にシェルスクリプトの変数の置換を行わせるか行わせないかで ' と " を使い分けることが多いです。 また、Unix だとパスの区切りは \ ではなく / なので、 その点では MS-Windows よりは ' と " の区別の必要は少なくて済むかもしれません。
なお、「情報やメモ (07/25 2014)」 に書いた x11 terminal に対する -noevents オプションが ハングアップする件ですが、 本家に報告したところ、それはバグではなく 現在のマニュアルが紛らわしいだけだ、という回答がありました。 -noevents は gnuplot 本体ではなく、 gnuplot_x11 という X11 描画ドライバに渡されるオプションだそうですが、 それを指定すると親プロセスへの情報の送信を行わなくなるので、 ハングアップしてしまうのだそうです。
よって、これはむしろ x11 terminal で使用するものではなく、 xlib terminal で X11 描画ドライバ用の出力を作成し、 その後 gnuplot_x11 を単独で起動して その出力を食わせるときに使うもののようです。 そんな使い方だとは初めて知りました。
ところで、x11 の描画が遅い件を、 とりあえずその -noevents で試してみましたが、 やはり -noevents ありでもなしでも遅いことに変わりはありませんでした。 となると、原因はフォント指定にありそうです。 フォントが見つからない場合、 デフォルトのフォントを使用するに至るまで、 何段階かのフォントの再検索を行っているのですが、 それが各 plot コマンド毎に行われてしまって 遅くなっているのかもしれません。 時間があるときにでも調べてみたいと思います。
2 ちゃんねるの掲示板「gnuplot を使おう。その 3」(アドレスは リンクリスト 参照) に書かれた情報について、 多少気になるものがありましたので、 少し書いておきます。
-
Cygwin のアップデートをしたら、 gnuplot でフォントに問題が起きるようになった、 という報告がありました (319)。
png terminal と pngcairo terminal に関する報告があがっていましたが、 いずれも表示されるエラーメッセージからすると fontconfig 関係のエラーのようです。
png terminal は gdlib (libgd) というライブラリを使用しますが、 最近の gdlib はフォントの検索やレンダリングに freetype ライブラリの他に fontconfig ライブラリも使えるようになっています。
pngcairo terminal は、フォントのレンダリングには pango というライブラリを使用しますが、 これも下請けとして freetype ライブラリ、 fontconfig ライブラリを使えるようになっています。
png terminal の方では、通常は fontconfig に関する警告がでて、 ドットのような文字が出るが、 GDFONTPATH を設定すると TrueType で表示される、と報告されていましたが、 png terminal は、ドット形式のフォントを 5 種類持っていて、 TrueType フォントが見つからなければそれを使用します。 set term png のオプションにある tiny, small, medium, large, giant というのがその内蔵ドットフォントです。 逆にそれが使われたということは、 デフォルトフォント (通常は arial) が見つからなかった、 ということを意味しますから、 fontconfig の警告が出ていることからも fontconfig 関係の設定の問題だろうと想像できます。
pngcairo の方も、fontconfig 関係のエラー (PangoRenderFc がフォントを見つけられない) が出ているので、 やはりこれも fontconfig の設定の問題だろうと思います。 ちなみに、GDFONTPATH を設定してもだめだったと書いてありましたが、 回答もある通り、GDFONTPATH は gdlib 用の設定なので pngcairo とは関係ありません。
Cygwin は知らないので想像ですが、 多分アップデートによって fontconfig の設定 (かキャッシュ) が現状と合わなくなったための 問題だろうと思います。そういう場合は、一般的には fontconfig の設定ファイル (fonts.conf) を確認し、fc-cache を実行すれば戻るのではないかと思います。
-
gnuplot-5.0rc1 で、軸の始点が 0 でないときの軸のラベルが変だ、 という報告がありました (325)。 [0:2e-6] だと、軸の刻みは 0, 5e-7, 1e-6, 1.5e-6, 2e-6 なのに、 [1e-6:3e-6] だと、刻みは 0.000001, 0.000002, 0.000002, 0.000003, 0.000003 になってしまう、ということでした。
調べてみると、これは、5.0rc1 というよりも gnuplot-4.6 の問題のようです。いくつかのバージョンで調べてみました。 なお、5.0rc1 は確認していませんが、多分現在の CVS 版か、 4.6.1 以降のものと同じではないかと思います。
- gnuplot-4.4 以前:
- [0:3e-6]: 0, 5e-07, 1e-06, 1.5e-06, 2e-06, 2.5e-06, 3e-06 ... (1)
- [1e-6:3e-6]: 1e-06, 1.5e-06, 2e-06, 2.5e-06, 3e-06 ... (2)
- gnuplot-4.6.0:
- [0:3e-6]: 0.000000, 0.000000, 0.000001, 0.000002, 0.000002, 0.000002, 0.000003 ... (3)
- [1e-6:3e-6]: 0.000001, 0.000002, 0.000002, 0.000002, 0.000003 ... (4)
- 4.6.1 以降:
- [0:3e-6]: (1) と同じ
- [1e-6:3e-6]: (4) と同じ
- 現在の CVS 版 (5.0rc1 も ?):
- [0:3e-6]: 「1e-06」のような表記が「1x10-6」 のようになること以外は (1) と同じ
- [1e-6:3e-6]: (4) と同じ
多分上の (3), (4) はバグではないかと思います。 気づきませんでしたが、4.6 でバグが入りこんで、 ずっとそれが残っているのではないかと思いますので、 あとで本家の方に報告しておきたいと思います。
なお、上に書いたように tics の表記は「e-06」のようなものから 「x10-6」のようなものに最近変わりました。 次の 5.0 ではこれがデフォルトになる予定です。
- gnuplot-4.4 以前:
-
4.6 にしたらタブ補完の後にスペースがつく、 および描画にかなり時間がかかるようになった、という報告がありました (331)。
まずタブ補完ですが、 gnuplot 自体が持つコマンドライン編集機能 (builtin-readline) には、 タブ補完が実装されたのは gnuplot-4.6 からで、 それ以前にはなかったと思います。 よって、この話は builtin-readline に関するものではなく、 GNU readline か BSD libedit ライブラリによる タブ補完の話ではないかと想像できます。 GNU readline か BSD libedit の話だとすると、 gnuplot の関知するところではないかもしれません。 なお、うちは GNU readline ですが、 gnuplot-4.6.0 から 4.6.5 まで、 ファイル名補完後にスペースがついたものはありませんでした。 builtin-readline に関しては確認していません。
また、「描画にかなり時間がかかるようになった」の方は、 「アニメーションだとかなり遅い」と書かれてあり、 後で terminal は x11 を使用しているという情報がありましたが、 x11 terminal での「アニメーション」というと、 スクリプトなどから連続して plot したときに画面のグラフが自然に切り替わる、 ということではないかと思います。 少し手元で gnuplot-4.2 から 4.6.5 くらいまでの x11 terminal で試してみました。 すると、4.6 で変わったというよりも、 むしろ 4.2.6 から 4.4.0 のところで急に遅くなっていて、 それ以後はほとんど変化はないことがわかりました。 ということは、元記事の方は 4.4 から 4.6 へ移行したのではなく、 4.2 から 4.6 へ移行したために遅くなった、 ということなのかと予想されます。
4.2.6 と 4.4.0 で変わったところを見てみると、 カラーマップとイベント処理あたりなのですが、 gnuplot に -mono オプションをつけて実行しても 4.4.0 はそれほど速くはなりません。 ではイベント処理の方かと思って、 gnuplot に -noevents オプションをつけて実行してみたのですが、 今度は gnuplot の x11 terminal 自体がハングアップしてしまいました。 -noevents は、いくつかのバージョンで試してみましたが、 いずれも x11 のグラフウィンドウを開いた後にハングアップしてしまいます。 これ自体多分バグだと思いますので、あとで本家に報告しておきます。 もし、イベント処理に時間がかかっているのだとすれば、 本来なら -noevents をつけて実行すれば速くなる可能性があるのですが、 残念ながら現状ではそれが原因なのかは確認できません。
なお、元記事の方は、解像度が上がってるようにも見える、 と書いているようですが、 4.4.0 以降の x11 terminal で解像度を上げる処理などが 実装されたということは、多分ないように思います。 実際画面で確認しても解像度が上がっているようには見えません。
しかし、これとは別に一つ気がついたこともあります。 どうも、X のフォントの設定に失敗した場合は遅くなるようです。 X11 のフォントの設定に失敗すると、x11 terminal の起動時、 あるいはコマンドラインに
gnuplot_x11: Some character sets not available
のようなメッセージがでることがあります。 特に日本語フォント (mbfont:) の設定がうまくいかないときにこれが出ます。 その場合に、
のようにして実行すると速い動作をします。 mbfont: が常に悪い、というわけではなく、 mbfont: でも上の警告メッセージが出ないように正しくフォントを設定すると ちゃんと速く動作するようです。 上に書いた 4.2.X と 4.4.X の違いも、 もしかするとこのフォント回りの部分に原因があるのかもしれません (未確認)。set term x11 font 'fixed'
(cf. 「情報やメモ (07/28 2014)」, 「情報やメモ (07/30 2014)」, 「情報やメモ (08/07 2014)」, 「情報やメモ (03/31 2015)」)
「情報やメモ (07/22 2014)」 に書いた、Wheel スクロールによる y 軸方向のズームですが、 そこに書いたように Ctrl + Wheel スクロールによるズームの 単位の設定を実装するパッチを作って本家に送ったら、 めでたく採用されたようです (5.0rc2)。 これは以下のように利用します:
set mouse zoomfactors XX, YY
set mouse zoomfactors 2, 2 → 速い (粗い) ズーム
set mouse zoomfactors 0.2, 0.2 → 遅い (繊細な) ズーム
set mouse zoomfactors 1, 0 → x 方向のみのズーム
set mouse zoomfactors 0, 1 → y 方向のみのズーム
- 拡大率 = 1.25P 倍
- 縮小率 = 1.25-P = 0.80P 倍
よって、P = 2 は 1.252 = 1.56 倍, 0.82 = 0.64 倍 (速くて粗いズーム) を意味し、 P = 0.2 は 1.250.2 = 1.05 倍, 0.80.2 = 0.96 倍 (遅くて詳細なズーム) を意味します。 P = 0 は、 1.250 = 1 倍, 0.80 = 1 倍なので、 拡大縮小をしません。
なお、これは「Ctrl + Wheel スクロール」 によるズームにしか影響しません。
(cf. 「情報やメモ (09/22 2014)」)
2 ちゃんねるの掲示板「gnuplot を使おう。その 3」(アドレスは リンクリスト 参照) に書かれた情報について、 多少気になるものがありましたので、 少し書いておきます。
-
0 のデータをグラフで非表示にするには、 という質問がありました (293)。
解として、
のようなものが紹介されていましたが、 これは、0 のデータは「無効値」とする、ということになります。 現在 (4.4 以降) の gnuplot では、 1/0 の代わりに NaN を使うこともできます。 なお、回答者は「1/0」でなく「0/0」と書いていましたが、 それでも確かに無効値にはなりますが、 数学屋としては「0/0」は少し避けたいところです。 また、元記事には「f(x) = (x == 0) ? 1/0 : x
plot "data" using 0:(f($1))0:f($1)」と書かれていましたが、 これは「0:(f($1))」(かっこあり) の誤植でしょう。なお、質問者の「非表示」の意味によっては 上では不十分かもしれません。 データ中に 1/0 や NaN のような無効値があると、 with lines などではグラフがそこで一旦切れます。 しかし、グラフを切らずに、そのデータを飛ばして線でつなぎたい、 という場合には、そこは「欠損データ」とするか、 データを完全に取り除く必要があります。
しかし、現在の gnuplot の using フィルタリングでは、 そこを欠損データとすることも、取り除くことも難しいようです。 set datafile missing を利用してもうまくいきませんが、 もし何かご存知でしたら教えてください。 とりあえずは、awk などを使って
のようにして 2 列目が 0 のデータを除いてしまうことでしょうか。 なお、内と外の引用符は OS によって適切なものを選んでください。 「plot '< gawk "$2 != 0" data' using 0:1 with lp$2」も場合によっては\などによるエスケープが必要かもしれません。 -
立ち上げる時のウィンドウサイズを変えたい、 という質問がありました (296)。
ターミナルの種類がわからないと返答できない、とありましたが、 もしかすると「ターミナルの種類」ではなく、 「起動時の対話型ウィンドウ」のことかもしれません。
Unix の場合は、kterm などで gnuplot とすると、 その kterm 内で CUI のものが起動します (MS-Windows の場合の gnuplot.exe もほぼ同様) が、 MS-Windows の wgnuplot の場合は コマンド入力用のウィンドウが立ち上がります。 「立ち上げるときのウィンドウサイズ」はそれを指しているかもしれません。 これであれば、多分以下のようにやればサイズの変更は可能です。
- wgnuplot を起動する
- 「オプション」か、タイトルバーで右クリックして出てくる 「Update (適当なパス)\wgnuplot.ini」をクリックする
- wgnuplot を終了する
- (適当なパス)\wgnuplot.ini を適当なエディタ (メモ帳 (notepad) 等)
で編集し、「
TextSize=」の後ろの数字を変更する (横幅、縦幅) - wgnuplot を再起動する
wgnuplot.ini には他の設定 (ウィンドウの初期位置等) もありますが、 もし変になったらその wgnuplot.ini を一旦消してしまえば デフォルトの値で起動すると思います。 gnuplot の「
help wgnuplot.ini」 にも説明があります。この wgnuplot のウィンドウサイズではなく、 グラフウィンドウのサイズのことだとすれば、 現在はたいていは「
set term [型] size [XX], [YY]」 という形式でset termで設定します。 -
あるグラフを xrange [0:1] で描画するとして、 [0:0.5] は破線、[0.5:1] は実線で描くにはどうしたらいいですか、 という質問がありました (303)。
これに対して、場合分けと無効値 (1/0 等) でグラフを切るような解が紹介されていました。 上でも書いたように、無効値は NaN と書くこともできますが、 別な解として、 「情報やメモ (12/21 2012)」, 「情報やメモ (01/22 2013)」 でも紹介した部分範囲指定を用いる方法もあります (要 CVS 版, 5.0rc1 等)。 また、破線、実線も現在の CVS 版 (5.0rc1 等) では set dashtype が実装され、 破線パターンなどのカスタマイズが容易にできるようになっています。
またこれと関連して、1/0 と 3 項演算子による場合分けのような 裏コマンド的な物はどこに載ってますか、 普通の書籍にはほとんど載ってませんが、 という意見がありました (305)。
確かに、1/0 などという他では見ないものも使いますし、 3 項演算子による場合分け関数定義も独特なので、 「裏コマンド」と見えるかもしれません。 しかし、以前の gnuplot 本にはあまり書いてなかったかもしれませんが、 山本さんの 「gnuplot の精義」 などには書いてありますし、 そもそもかなり以前 (gnuplot-3.7 位) から gnuplot のオンラインマニュアル (
help ternary) や 付属の FAQ などに、 この 1/0 と 3 項演算子を用いた場合分け関数の例が書いてあります。 だから、gnuplot では「裏コマンド」ではなく、 標準的な用法の一つといっていいでしょう。
2 ちゃんねるの掲示板「gnuplot を使おう。その 3」(アドレスは リンクリスト 参照) に書かれた情報について、 多少気になるものがありましたので、 少し書いておきます。
-
EMF terminal の fill は solid 系の塗り潰しなんだけど、 ps のような pattern の塗り潰し (網掛け) はできないか、 という質問がありました (261)。
これは、既に以下で報告した通り、現在の CVS 版では実装されています。
LibreOffice でうまく表示されないなど一部問題もあるようなのですが、 win terminal の EMF 出力と同じものが実装されているので、 とりあえずはこれ以上は仕方ないという感じでしょうか。
また、関連して emf terminal に関する他の問題も上げられていましたが (269)、それらもすでに上のページに書いてある通り CVS 版では修正済みです。
-
グラフウィンドウ上で、Ctrl + Wheel スクロールで x, y 両軸のズーム、 Shift + Ctrl + Wheel スクロールで x 軸のズームになっているけど、 y 軸のみのズームは、という質問がありました (278)。
残念ながら現在は y 軸のみのズームはなぜかありません。 割り当てられていないというだけでなく、 y 軸のみのズームを行う関数がそもそも用意されていません。 作成者が必要としていなかった、ということでしょうか。
もし実装するとすると、例えば Alt (Meta) キーを利用するか、 または Ctrl + Wheel スクロールによるズームの単位を x, y 軸毎に設定できるようにするか、でしょうか。 Alt キーの検出も用意されているようですので、 いずれの実装もそれほど難しくはなさそうに思います。
-
gnuplot の補完があまり賢くない、という記事がありました (290)。 普段使用している zsh, ipython に比べて、とありましたので、 Linux ユーザでしょうか。
rlwrap を噛ませたら、という回答もあったようですが、 現在は gnuplot のコマンドライン編集機能は、コンパイル時に
- gnuplot 自体が持っているものを使用する (default)
- GNU readline ライブラリを使用する
- NetBSD editline ライブラリを使用する
- いずれも使用しない
の 4 通りから選べるようになっています。 MS-Windows 版バイナリは多分 gnuplot 自体が持っているものを 使っていると思います。 特に BSD editline はよく知りませんが、 GNU readline を選ぶと多少はましなのかもしれません。
なお、関連して、ヒストリに関しても少し言及がありましたが、 gnuplot 自体のヒストリ機能については少し手が入り、 現在は CVS 版で「set history」というものが新設されています (cf. 「情報やメモ (12/27 2013)」)。
2 ちゃんねるの掲示板「gnuplot を使おう。その 3」(アドレスは リンクリスト 参照) に書かれた情報について、 多少気になるものがありましたので、 少し書いておきます。
-
ここには、ときおり gnuplot+ に関する熱い思い (?) が投稿されていて、 議論になっていることも多いようです。 例えば 152, 181-186, 211-226, 228-261 あたりもそういった内容です。
ただ、今回あらためてその議論を見直して 認識を新たにしたことが一つありました。 228 付近の記事を見て思ったのですが、 もしかして gnuplot+ を使う目的として、
「LaTeX は使わないけど、数式が綺麗にラベルに書いた EPS が欲しい」
ということがあるかも、と思いました。そうやって作った EPS をその後別なソフトに取り込むのだと思いますが、 私は基本的に EPS は LaTeX でしか使いませんので、 「数式をラベルに書く」場合は、 「情報やメモ (08/12 2013)」 に書いたように むしろ psfrag を使って LaTeX 側で変換しています。 epslatex terminal もあるから、 その点では現在 gnuplot+ の機能は gnuplot (+ LaTeX) で足りてるよね、 と思っていたのですが、 LaTeX を使わない人にとってはそうではない、 ということに全く気がついていませんでした。
LaTeX がない環境でも、LaTeX のような数式記号を使って 綺麗な数式がラベルに書けるのは、 確かにそれなりに意味があるかもしれません。 現在の gnuplot に取り入れる価値もありそうな気がします。 ただし、現在の postscript terminal へのオプションという形式は、 postscript terminal への追加、変更が大きく、 本家には受け入れられにくそうな気がするので、 やるなら新しい terminal かなとも思います。 検討する意味はありそうです。
なお、山賀さんの plus パッチは 3.7.X まででしたが、 その後開発版 (3.8) に対する plus の移植を しばらく尾田さんがやっておられて、 その後 Vine Linux で一時期 4.0.0 に plus パッチを当てたパッケージがあったように聞いたことがあります。 その辺が意外に使えるかもしれません。
-
gnuplot の EPS 出力を pstoedit 等で EMF に変換する際、 フォントの変換がうまくいかない、という記事がありました (187)。
EPS 出力をするところで、
のようにやっていて、 質問者は後に作成した PostScript ファイルのフォント部分を 強引に書き換えるバッチファイル (192) を利用して回避したようですが、 上のような「スペースの入った PostScript ファイル名を指定」したコードは 多分問題があると思います。set xlabel font "Times New Roman Bold Italic,20"
set xlabel "x {/Times-Roman [mm]}"gnuplot は、指定されたフォント名を何も疑わずにそれを PostScript フォント名として PostScript ファイルに書き出します。 上のように実行すると実際
のように EPS ファイルに書き込まれますが、問題はこの後です。 上のように「スペースの入った」PostScript フォント名を解釈するのは、 gnuplot ではなく次のプログラムの役割です。 多分実際には ghostscript、pstoedit あたりが解釈することになると思いますが、 どちらも多分失敗するでしょう。 つまり、gnuplot では、「PostScript フォントの解釈」 は一切やらないので、その次のプログラムが 正しく解釈できるフォント名を指定することが原則です。[ [(Time New Roman Bold Italic) 200.0 0.0 true true 0 (x )]
[(Times-Roman) 200.0 0.0 true true 0 ([mm])]ちなみに、うちの ghostscript の設定を見ると、 Times New Roman の Bold Italic フォント、 Times-Roman のフォント名は、それぞれ TimesNewRoman-BoldItalic (実際には Times-BoldItalic が使われる) と Times-Roman となっていて、フォント名にスペースは入りません。 実際、上の EPS ファイルを ghostscript に処理させると、 「Times New Roman Bold Italic」フォントには代用フォント (たまたま Times-BoldItalic) が使われているようです。 元記事の方は、むしろ Times-Roman の方のフォントの変換に問題が、 と書いておられるようですが、それは ghostscript か pstoedit の設定の問題だと思います。
ちなみに、pstoedit は、-fontmap オプションで フォントマップが指定できますから、 むしろこちらでフォント名を書き換えるのでしょう。 例えば、デフォルトの wemf.fmp には
のようなエントリが入っています。 これらを参考に適切なフォントマップを作ればいいんだろうと思います。"Times-Roman" " Times New Roman"
"Times-Bold" " Times New Roman:Bold"なお、関連して、EMF terminal の問題なども上げられていましたが、 それらについては既に以下で紹介、修正済みです
- 「情報やメモ (09/14 2012)」 (gnuplot の作る EPS を MS-Word に貼り込んで PDF を出力させると 枠のような四角がでる)
- 「情報やメモ (11/28 2013)」 (pt 6 の円の線が lw で太くならない等)
-
gnuplot-4.6.4 では、CVS 版の機能として紹介されてた 名前付きデータブロックの機能は入ってないのか、 という記事がありました (205)。
gnuplot では、パッチレベルの更新 (4.6.3 の「3」とか) では バグの修正が大半で、 その間に作られた新しい機能は入らないことが多いです。 他の機能との整合性の問題もあるのだろうと思います。
なお「名前付きデータブロック」(インランデータブロックとも言う) は、 5.0 で登場します (rc1 には入ってます)。
-
x11 terminal でシンボルフォントを使うには、という質問がありました (207)。 enhanced で「{/Symbol}」は PostScript 以外では使えない、 とういことでした。
ちなみに、その「{/Symbol}」を実行したときに出たというエラーメッセージは、 gd ドライバのメッセージ (gif/png/jpeg terminal) のようでしたが、 gd ドライバなら、適切なフォントを指定すれば Symbol も使えます。 gd ドライバが fontconfig 対応になっているか、なっていないかで フォント指定が違いますが、なっていなければ TrueType フォント名を、 なっていれば fontconfig が探せる Symbol フォント名を指定すればいいです。 MS-Windows なら、symbol.ttf がついていますし、 OpenOffice や Acrobat Reader, ghostscript などにも TrueType フォントや Type 1 フォントの形式でついていますので、それらを利用できます。 そういう話が、以下に多少書いてあります。
さて、X11 の話ですが、Linux では symbol.ttf 用のパッケージがあり、 {/symbol} で x11 enhanced でも表示された、という回答がありました。 うちの FreeBSD 上では、{/symbol} でも {/Symbol} でも シンボルフォントが表示されました。=20 をつけて拡大もできます。 一応うちには -adbe-symbol-medium-r-normal-... ってのが入ってるみたいです。
2 ちゃんねるの掲示板「gnuplot を使おう。その 3」(アドレスは リンクリスト 参照) に書かれた情報について、 多少気になるものがありましたので、 少し書いておきます。
なお、最近忙しくて、こちらに関してはしばらく書いてませんでしたが (よってかなり古い)、 まあ少しずつ書いていこうかと思います (だから今回も少しだけ)。
-
C 言語からパイプで gnuplot でグラフを書かせようとしているけど うまくいかない、という質問がありました (167)。
手動ならうまくいくんだが、ということでしたが、 どういうプログラムかの提示がなかったので あまりまともな回答がついていなかったようです。
エラーメッセージとして
No usable data in this plot to auto-scale axis range
と出ると書いてありましたが、 これは、splot を実行した際に入力データが一つもなかったことを意味します。 例えば「splot '-'」でそのまま「e」を入力すると同じメッセージがでます。
All points x value undefined多分、パイプでのデータ渡しの方法を勘違いしていて、 データが gnuplot にうまく通っていなかったのでしょう。
-
gnuplot は netCDF のデータはサポートしてないのか、 という質問がありました (172)。
HDF5 の話も書いてありましたが、 現在の CVS 版でもそういうデータ形式のサポートは行われていません。 今のところそれに近そう (?) なのは、 EDF (Europian Data Format) のサポートのみです (http://www.edfplus.info/)。
実のところ、私は EDF も netCDF も HDF5 もよく知りません m(_ _)m
前回の報告 (04/28 2014)以後、 現在の CVS 版に入れられた主な機能について紹介します (ChangeLog, manual の更新部分等より)。
- 一般的な機能
- fit で疑似データ '-' がクラッシュする問題の修正 (06/13)
- 日時データが 2 列しかない場合の fit のチェックに関する改良 (06/11)
- fit の共分散行列のチェックをユーザ変数への保存前に行うように (06/09)
- 新オプション: set border behind (hidden3d 処理用) (06/03)
- 点種の 1 文字を splot でも使えるように (05/28, 06/03)
- splot の描画スタイルオプションの確認に関する修正 (05/28)
- 「NaN」データの処理と stat コマンドの修正 (05/27)
- 対話出力形式であるグラフをオフにしたときに対応する key を灰色表示 (svg/qt/wxt/x11/win) (05/26, 05/30, 06/02)
- key タイトルの幅の調整と enhanced に関する修正 (05/23)
- set linetype cycle で点の種類の個数を考慮するように変更 (05/16)
- 新しい点種 5 角形 (14, 15) を追加 (qt/svg/cairo/wxt/emf) (05/14, 05/19)
- 使われていなかったコード (test_time() と set pm3d at C 用) を削除 (05/13)
- CSV の空フィールド上では stringcolumn(N) は空文字列を返すように (05/11)
- xticlavels() が文字列値を返さない場合の対処 (05/11)
- マウスズームに関する修正 (05/10)
- ctype.h のマクロの問題や初期化などの全体的なコードの改良 (05/10, 05/11)
- 問題のため 04/26 のマウスズームのパッチを元に戻す (05/08)
- 入力の NaN, Inf の保存の仕方の変更 (05/08)
- impluses で対数軸でなければ自動縮尺では y=0 (z=0) を含むように (05/05, 05/08)
- object の境界に dashtype を含む線属性をすべて実装 (05/05)
- layer に関するコードの修正 (04/28, 06/01)
- show で arrow style の fixed 属性を表示するように (05/01)
- timecolumn(col) を timecolumn(col, "timeformat") に (04/29)
- set mouse の mouseformat と clipboadformat の違いを削除 (04/28)
- terminal ドライバ
- qt: pause mouse color が効いていなかった問題等の修正 (06/11)
- aquaterm: エンコード CP1252 のサポートをちゃんとしたものに (06/11)
- post/svg/qt: dashlength のサイズが適切になるように修正 (06/10)
- post/svg/lua: dashlength のスケールを linewidth に対するものに (06/10, 06/12)
- qt: 最初の描画サイズが環境によって不適切なものになる問題の修正 (06/09)
- wxt: ウィンドウの上下の状態も復帰できるように (06/09)
- win: version 5 の線種とカスタマイズを行うように (06/09)
- wxt: dashlength のスケールを qt と同様に linewidth に対するものに (06/07)
- win/caca/wxt: -persist の処理の改良 (06/04)
- wxt: 有効でないグラフの key の灰色化の処理に関する修正 (06/03)
- win: ウィンドウ位置とサイズの変更が直ちに適用されるように (06/02)
- post/cairo: pslatex 関連 の header キーワードの脆弱性の問題の修正 (05/30)
- gd: フォント名指定のオーバーフローの問題に関する修正 (05/30)
- caca: CJK の Windows 用の codepage に関する修正 (05/29)
- win: 点種の順番を他の terminal に合わせて変更 (05/29)
- wxt: マウスを動かさないと先に進まなくなる問題の修正 (05/24)
- wxt: wxwidget3 と Xlib のスレッドの初期化に関する問題の修正 (05/19)
- post: 新しい dash pattern の設定前に前のパスを常に書くように (05/13)
- gd: terminal サイズ 0 を認めないように (05/10)
- pdf: 線種は version 5 のを使うように (カスタマイズはサポートしない) (05/06)
- pdf: デフォルトでは build されないように (05/06)
- emf: 線種のカスタマイズのサポート (05/06)
- 点の記号描画では点線を使わないように (05/05)
- dashed/solid の terminal 設定は無視するように (05/05)
- x11/xlib: 線種のカスタマイズのサポート (04/29)
- x11: クリップボードの内容を 2 度以上使えるように (04/27)
- その他
- MS-Windows (MinGW) 上での qt 用のインストール環境の修正 (05/29, 06/01, 06/11)
- 5.0.rc1 用、5.0 リリース版の準備用の修正 (05/15, 05/30)
- Cygwin, MinGW 用の config ファイル、Makefile, CLang 用の修正等 (05/01)
- デモ
- demo/dashtypes.dem: dashlength と linewidth の関係用のテストの追加 (06/10)
- demo/dashtypes.dem: 警告を避けるための修正 (05/15)
- demo/dashtypes.dem: 線幅を少し細く (05/13)
- demo/html/*: dashtype を追加 (05/01)
- demo/gantt.dem: ガントチャートデモ (timecolumn()) の追加 (05/01)
- demo/{dashcolor,lines_arrows}.dem: あいまいな lt 表現の削除 (04/29)
5.0 公開用の修正がかなりたくさん入っています。 さらに新機能がいくつか駆け込みで追加されているようですが、 これは 5.0 に反映されるのでしょうか。 例えば目新しいものといえば、以下のあたりでしょうか。
- 対話出力形式であるグラフをオフにしたときに対応する key を灰色表示 (05/26, 05/30, 06/02)
- set linetype cycle で点の種類の個数を考慮するように変更 (05/16)
- 新しい点種 5 角形 (14, 15) を追加 (qt/svg/cairo/wxt/emf) (05/14, 05/19)
- timecolumn(col) を timecolumn(col, "timeformat") に (04/29)
- dashlength のスケールを linewidth に対するものに (06/07, 06/10, 06/12)
「灰色表示」は、x11 terminal では残念ながらあまり綺麗ではないようです。 灰色ですらなく、点々みたいなもので隠している感じです。
- x11 terminal で key で cos(x) のグラフを隠した場合
linetype cycle は、点種には効いてなかったようで、 しかも線種が少ない場合には、 それより多い点種は使われないことすらあったようです。 それを、例えば linespoints の場合に (線種) * (点種) だけ回るようにした、ということのようです。 ただ、要検討といった感じで (本当は set pointtype cycle が必要、 という文言が見られます) 今後も変更があるかもしれません。
timecolumn(col) から timecolumn(col, "timeformat") への変更は、 軸の time format とは独立に、timeformat を指定しながら timecolumn() を使用するための変更のようです。
あまり余裕がないので詳細なレポートはできませんが、
最近
gnuplot の Q&A 掲示板 上などで、
松岡さん、角藤さんという win 用のバイナリを作っておられるお二方が協力して、
wxt/qt terminal 回りをかなり色々作業しておられます。
今回の更新でも、彼等の作業によるそれらの terminal に関する修正や
コンパイル環境、インストール処理などの修正が少しずつ入っています。
gnuplot は MS-Windows ユーザも多いので (特に日本は)、
そのような貢献はとてもありがたいと思います。
そのような議論の場を提供しておられる松田さんにも感謝です。
(私は最近はマニュアルの誤植の修正程度 (^^;))
(cf. 「情報やメモ (09/22 2014)」)
前回の報告 (03/14 2014)以後、 現在の CVS 版に入れられた主な機能について紹介します (ChangeLog, manual の更新部分等より)。
- 一般的な機能
- 符号チェックやクリッピングに関するオーバーフローの問題の修正 (04/27)
- 現在位置中心のマウスズームに関する問題の修正 (04/26)
- save 時に lt -3 のようなものを lt bgnd のようにするように (04/25)
- 「set linetype N linetype M」を受けつけないように (04/25)
- 字句解析部分に関する改良 (04/24)
- y2 軸のマウスズームに関するバグの修正 (04/24)
- ASCII データの読み込みで数値でなく文字列になった場合に関する修正 (04/23)
- replot コマンドでも範囲指定できるように (04/23)
- set view map に "scale <scale>" オプションを導入 (04/23)
- test が最初のコマンドでかつリサイズした場合の問題の修正 (04/19)
- 拡張文字処理でフォント名の後ろのスペースは 1 つだけ捨てるように (04/18)
- test コマンドの表示の追加/改良 (04/17, 04/24)
- 線種のカスタマイズに関する問題の修正 (04/17, 04/18)
- 垂直マウススクロールの方向を反転 (04/14)
- ファイルサイズ保持変数を int から off_t に (64 bit 用の対応) (04/13, 04/14)
- sizeof(long)=4 上での int64 型の処理に関する修正 (04/11)
- 線種と点種を分離するための新しい線種 "nodraw" の追加 (04/08)
- 出力形式に個々の dashtype を実装させるための仕組みの追加 (04/07, 04/08)
- データブロックにテーブル出力できるように (04/05)
- 種々のメモリ使用に関する修正 (04/04)
- 負の lt による linestyle 定義は色のみを取るように (04/04)
- fit の不正な共分散行列やコンパイラの警告に関する修正 (04/03)
- 新しい等高線ラベルの初期化に関する修正 (04/02)
- "set pm3d hidden3d <lt>" を "set pm3d {no}border {線属性}" に (04/02)
- "with image pixels" を "with image failsafe" に (04/02)
- パレットデータの内部取り扱い方法に関する修正 (04/01)
- 字句解析部分の改良 (03/30)
- set multiplot layout の新しいオプション margins, spacing (03/29)
- 文字の point に対する key の色付け (03/24)
- 塗る色を linecolor で指定したときに現在の linetype を確認するように (03/24)
- 新設: set print $datablock (print 出力をメモリデータへ) (03/23)
- 'black' を 'bgnd' 同様に色名、lt のどちらでも使えるように (03/22)
- 新しい linestyle の線種をデフォルトでは solid に (03/22)
- 新設: set colorsequence {default|classic|podo} (色列の変更) (03/22)
- ループの終了条件のチェックに関する問題の修正 (03/21)
- fit の共分散行列が不正な場合のパラメータエラー出力の抑制 (03/20)
- codepage 1252 エンコーディングのサポート (03/20)
- 点描画、凡例に関するコードの改良 (03/19)
- set dashtype で点線/破線を "-_." か数値で指定可能に (03/17, 03/18, 03/19)
- 点種として一文字 (半角/全角) を pt に直接指定できるように (03/16, 03/19)
- pm3d の色の型 (内部値) のデフォルトの修正 (03/17)
- lt とは独立な点種用の dashtype キーワードの新設 (03/16)
- 軸の tics に関するコードの整理 (03/16)
- fit の初期パラメータに関する警告の追加 (03/15)
- set fit errorvar をデフォルトに (03/15)
- fit に関するメモリリークの問題と収束に関する修正 (03/15)
- fit に関する不要な検索アルゴリズムの改善 (03/14)
- columnheader に関するアルゴリズムの改善 (03/14)
- Bold/Italic に関するバグの修正 (03/13)
- terminal ドライバ
- canvas: 線種のカスタマイズのサポート (04/21)
- qt: encoding CP950, CP1251, CP1252, SJIS のサポート (04/20)
- qt/wxt: position オプションの追加 (04/20)
- post: 線種のカスタマイズのサポート (04/19)
- qt: 線種のカスタマイズのサポート、線種 nodraw の実装の変更 (04/18)
- svg: バッファに関する問題の修正 (04/18)
- svg/cairo/wxt: 線種のカスタマイズのサポート (04/17)
- win: 不完全な文字列書式に関する修正 (04/03)
- win: コマンドリストの有効性のテスト (04/03)
- win: メモリエラーの修正 (03/30)
- caca: 日本の Windows でのコードページを 932 から 437 へ (03/30)
- qt: multiplot で起きる segmentation fault の問題の修正 (03/27)
- emf: Bold/Italic の実装 (03/24)
- win: 拡張文字列に関する問題の修正 (03/23)
- post: Bold/Italic に関する問題の修正 (03/21)
- win: set encoding locale を utf8, sjis 以外にも拡張 (03/20)
- win/cairo/aquaterm/pdf/post/pslatex/svg: CP1252 エンコードサポート (03/20)
- svg: key とグラフの描画の間に現在の線種を失う問題の修正 (03/20)
- win: MSVC 用の snprintf()/vsnprintf() の標準的な置き換えの使用 (03/19)
- qt: 画像のクリッピングの実装、座標の変数に関するバグの修正 (03/19)
- x11: persist フラグを x11 に局所的に適用/記憶するように (03/18)
- qt: 対話型描画ウィジェットからのイベントをブロック (03/18)
- win: Bold/Italic の実装 (03/15)
- qt: 点種の描画線幅に現在の線幅を使用するように (03/14)
- svg: 文字列長に関する Firefox のバグ回避用の修正 (03/13)
- その他
- Windows の MSVC での警告に関する修正 (04/03)
- 5.0.「alpha」 というバージョン名に対する Makefile の修正 (03/30)
- multiplot のコードに関する整理 (03/29)
- ドキュメントなどをバージョン 5 用に修正 (03/22)
- gpic, mif を --with-gpic, --with-mif のときに有効に (03/19)
- CVS 版のバージョンを 4.7 から 5.0 alpha に (03/15)
- Windows 用インストーラで GNUPLOT_LIB にディレクトリを追加 (03/15)
- デモ
- demo/{dashtypes,all}.dem: 新しい線種 (点線/破線) デモ (04/18)
- demo/{dashcolor,lines_arrows}.dem: 線種カスタマイズに関する修正 (04/17)
- demo/all.dem: varcolor.dem を追加 (04/07)
- demo/vector.dem: set table $datablock テストの追加 (04/05)
- demo/transparent_solids.dem: "set pm3d {no}border {線属性}" に (04/02)
- demo/heatmaps.dem: "with image failsafe" に (04/02)
- demo/lines_arrows.dem: UTF-8 コード化 (03/30)
- demo/rectangle.dem: version 5 用の修正 (03/29)
- demo/layout.dem: set multiplot layout の margins, spacing 用 (03/29)
- demo/lines_arrows.dem: 文字の point に対する key の色付け (03/24)
- demo/tango_colors.dem: 線種列を設定 (03/23)
- demo/{ellipse,fitmulti,kdensity2d,random,rugplot}.dem: set print $datablock (03/23)
- demo/dashcolor.dem: UTF-8 コード化 (03/20)
- いくつかのデモをバージョン 5 用に更新 (03/19)
- demo/dashcolor.dem: 文字 pointtype デモの追加 (03/19)
- demo/enhanced_utf8.dem: Bold/Italic のデモの追加 (03/13)
前回の報告から 1 ヶ月半位の間ですが、5.0 の公開に向けてか、 かなり色々修正などが入りました。 主要なものは以下のあたりでしょうか。
- lt とは独立な点種用の dashtype キーワードの新設 (03/16)
- 点種として一文字 (半角/全角) を pt に直接指定できるように (03/16, 03/19)
- set dashtype で点線/破線を "-_." か数値で指定可能に (03/17, 03/18, 03/19)
- codepage 1252 エンコーディングのサポート (03/20)
- 新設: set colorsequence {default|classic|podo} (色列の変更) (03/22)
- 新しい linestyle の線種をデフォルトでは solid に (03/22)
- 新設: set print $datablock (print 出力をメモリデータへ) (03/23)
- set multiplot layout の新しいオプション margins, spacing (03/29)
- "set pm3d hidden3d <lt>" を "set pm3d {no}border {線属性}" に (04/02)
- "with image pixels" を "with image failsafe" に (04/02)
- データブロックにテーブル出力できるように (04/05)
- 線種と点種を分離するための新しい線種 "nodraw" の追加 (04/08)
- test コマンドの表示の追加/改良 (04/17, 04/24)
- qt/wxt: position オプションの追加 (04/20)
- set view map に "scale <scale>" オプションを導入 (04/23)
- replot コマンドでも範囲指定できるように (04/23)
1. は点線/破線用のオプションですが、 これまではそれは terminal で dashed などと指定した上で、 linetype でしか指定できませんでした。 今回ようやく点線/破線の種類を明示的に指定できるようになり、 linetype 属性である線や点の色 (linecolor)、線種 (dashtype)、 点種 (pointtype) がすべて独立に指定できるようになりました。 dashtype は、数値指定 (実線長、空白長の組の並び) も可能ですし、 . と - と空白の組み合わせによる文字列表現も可能になっています。 set dashtype で点線/破線パターンを登録して、 それを番号参照することも可能です。 マニュアルには以下のような例が載っています。
set dashtype 5 (2,4,2,6)# 5 番の dashtype を定義または再定義
plot f1(x) dt 5# その dashtype を使って plot
plot f1(x) dt (2,4,2,6)# 上と全く同じグラフ
set linetype 5 dt 5# このパターンを linetype 5 で常に使う
set dashtype 66 "..-"# 文字列で新しい dashtype を定義
2. は、pt で「pt "C"」のようにできるようにしたものです。 もちろん with labels でも似たようなことはできるのですが、 with linespoints などと同等のことをするには with lines + with labels の 2 度描きしないといけなくて面倒だったのが、そうしなくて済むようです。 demo/dashcolor.dem, demo/lines_arrows.dem には "C", "D" の他に、Unicode (UTF-8) 文字の U-2720 (マルタ十字)、 U-2729 (強調縁取りの白抜きの星)、 U-2732 (中空のアスタリスク)、 U-263A (白丸笑顔) を使ったサンプルが出ています。
- dashcolor.dem の「pt "文字"」のサンプル (wxt terminal)
- lines_arrows.dem の「pt "文字"」のサンプル (wxt terminal)
なお、いずれも「pi -5」のところが U-263A になっているのですが、 うちの wxt 環境ではその smile の Unicode 文字が うまく表示されていないようです。
7., 11. は、データブロックの適用範囲を拡張したものですが、 従来行われていた set table で一旦テーブルデータを 一時的な外部ファイルに吐き出して、 それを再利用する、という裏技のような作業が、 外部ファイルなしにメモリ上のデータブロック経由でできるようになりました。
13. は、以下の 2 つを見比べると、 例えば Bold/Italic のテストが追加されていることがわかります。
- 少し前の CVS 版の test の出力 (wxt terminal)
- 現在の CVS 版の test の出力 (wxt terminal)
凡例の線の長さも少し長くなっているようですが、後は 上の方の文字列と矢印のサンプルが少し変更されていること、 下の pattern fill サンプルが一つ削除されていること位でしょうか。
16. は、これまでは replot で範囲指定オプションをつけると 「cannot set range with replot」と言われていましたが、 範囲指定ができるようになったというもののようで、 これは結構重宝するかもしれません。 ただ、現在は、
gnuplot> plot sin(x)
gnuplot> replot [4:5]
gnuplot> plot sin(x), [4:5]
最近、CVS 版が 4.7 から 5.0 alpha と代わり、 5.0 のリリースが近づいてきたこともあり、 色々な更新が CVS 版に入ってきています。 少し忙しいのでそれらを丁寧に紹介はできませんが、 今 CVS 版をインストールすると一番ギョッとするのが 多分「色列」の変更でしょう。 それについて簡単に説明しておきます。
簡単に、「plot sin(x),sin(x-1),sin(x-2),sin(x-3)」などとすると、 現在はデフォルトでは以下のように表示されます。
- デフォルトの wxt terminal での色列
lt 1 = 赤、lt 2 = 緑、lt 3 = 青、lt 4 = 紫、となじんでいた人には 結構衝撃的だと思います。 実は、新たに「set colorsequence {default|classic|podo}」 という設定が導入され、デフォルトの色列の変更が行われました。 オプションの意味は、以下の通りです。
- default = 出力形式に依存しない (共通な) 8 色巡回列
- classic = 従来の、出力形式がそれぞれ持つデフォルトの色列
- podo = 色弱者にも優しい 8 色巡回列
よって従来の表示に戻したければ、最初に「set colorsequence classic」 としてください。それぞれのサンプルを紹介します。 ついでに test の結果もつけます。
- colorsequence classic の wxt terminal での sin(x-n) のグラフ
- colorsequence podo の wxt terminal での sin(x-n) のグラフ
- colorsequence default の wxt terminal での test の結果
- colorsequence classic の wxt terminal での test の結果
- colorsequence podo の wxt terminal での test の結果
test の結果は右側の凡例だけが変更されていますが、 他の部分は直接色を指定しているので変わりません。 実際にも色を固定したい場合は、 色名を直接指定して描画するといいでしょう。
(cf. 「情報やメモ (05/09 2016)」)
前回の報告 (01/29 2014)以後、 現在の CVS 版に入れられた主な機能について紹介します (ChangeLog, manual の更新部分等より)。
- 一般的な機能
- 下の \it, \bf を {/font:Bold:Italic text} のような形式に変更 (03/10)
- 点種の自動更新に関する修正 (03/10)
- ビットシフト演算 <<, >> のサポート (03/09)
- fit のパラメータ間の共分散を変数 FIT_COV_*_* に保存 (03/09)
- 拡張文字処理で LaTeX 風の \it (italic), \bf (bold) が使えるように (03/09)
- timestamp の文字色を変更できるように (03/08)
- fit のエラーメッセージにパラメータファイル名を出力 (03/08)
- fit コマンドの関数定義を fit.log に出力 (03/08)
- unknown terminal で描画する際の警告の表示 (03/08)
- 計算できない stat 変数の設定を NaN に変更 (03/07)
- stat の分散計算を桁落ちのない 2 パス計算に変更 (03/07)
- stat の STAT_{skewness|kurtosis} およびその標準誤差の追加 (03/07)
- 色名の代わりに直接 16 進定数を指定できるように (03/07)
- 最上位ビットが 1 の 16 進定数の読み込みの際の問題の修正 (03/04)
- 極座標モードで '+' が使えるように (03/04)
- fit に関するコードの整理 (03/04)
- fit にオプション列で errorbar を追加 (02/28)
- 外部共有ライブラリの関数を取り込む import コマンドの新設 (02/27, 02/28)
- デフォルトで fit のパラメータの事前スケーリングを行うよう (02/27)
- fit のオプション noerrors/zerror の新設 (02/27)
- データブロックの最後の改行処理の修正 (02/26)
- 日時処理の関数の処理の修正 (02/26)
- stat の STATS_{slope|intercept}_err (回帰係数の不確かさ) の新設 (02/26)
- CSV ファイルのある種のデータによって起きるバグの修正 (01/31)
- smooth の unwrap オプションの新設 (01/30)
- 極座標モードでの自動縮尺に関する問題の修正 (01/29)
- reresh コマンドで GPVAL_* を更新するよう修正 (01/29)
- terminal ドライバ
- qt/wxt/svg/cairo/gd/post: 新しい bold, italic の書式のサポート (03/10)
- post: デフォルトで enhanced モードにする部分の修正 (03/10)
- qt/wxt/cairo: boldface, italic を実装 (03/09)
- pdf: ポイントサイズ 0 の場合に起きる問題の修正 (03/04)
- qt: マウス座標の表示位置を選択可能に (03/02)
- svg: 境界近くのラベルが欠ける問題の修正 (02/28)
- qt: gnuplot の接続中に描画サーバが落ちたときの処理に関する修正 (02/26)
- qt: OSX 上 (qt5) でのフォントに関する処理が遅いことの回避 (02/26, 03/04)
- qt: フラッシュ前の有効なソケットのチェック (02/24)
- caca: 初期化に関する修正 (02/23)
- caca: バックエンドを引用符で囲むことを強制しないように (02/23)
- qt: 最初と描画ウィンドウを閉じた後のそれのサイズ処理の改良 (02/16)
- win: ドライバのマウス処理を term->waitforinput を使うように (02/15)
- qt: ソケットフラッシュ後のデッドロックに関する修正 (02/15)
- term->waitforinput の Windows 環境での改良 (02/12, 02/14, 02/16, 02/24)
- qt: OS X 用の dock アイコンの処理の改良 (2012-06-23) を元に戻す (02/12)
- qt: gnuplot-qt からのデータが少なすぎる場合の処理の改良 (02/12)
- win: ShowCaret/HideCaret のバランスに関するチェック (02/12)
- win: 関数 stdin_pipe_reader を外部で利用できるように (02/12)
- win: 1 文字入力コードを gnuplot 関数 (ConsoleReadCh) に独立 (02/12)
- qt: qt オブジェクトの有効性に関するチェックの追加 (02/12)
- qt: 接続待ちルーチンを改良 (02/11)
- qt: 一つの描画後に QtGnuplotWidget がシグナルを出すように (02/09)
- svg: firefox 3.x 用のその場しのぎを削除 (02/04)
- qt: 多量の点、線等の描画速度を改善する改良 (01/31)
- win: マウスの水平スクロールのサポート (01/29)
- qt: ウィンドウリサイズ時のウィンドウ表示に関する改良 (01/29)
- その他
- PDF のマニュアルにデフォルトで図を入れるように (03/06)
- 古くなった gnuplot-mode (lisp/*) の削除 (03/06)
- qt5/qt4 のライブラリがあったらデフォルトで qt terminal を有効に (03/03)
- --with-qt=qt5 で強制的に qt5 を使用するように (02/24)
- MinGW でコンパイル時に -pipe を使用 (スピードアップ用) (02/23)
- マウスを使う対話型出力形式サポート時にマウスもサポートするように (02/18)
- --disable-mouse 等の条件コンパイルに関する修正 (02/16, 02/23)
- MS VC++ 環境での cairo, Qt 等の追加を MinGW に合わせた形に改良 (02/12)
- 新規 configure オプション --with-wx-single-threaded (for wxt) (02/04)
- デモ
- demo/bolditalic.dem: 新しい Bold と Italic の書式のデモ (03/10)
- demo/rgba_lines.dem: 左ビットシフト演算を使うように修正 (03/09)
- demo/arrowstyle.dem: for と '+' を用いた簡略化 (03/09)
- demo/fit.dem: 常に適当な初期値を設定するように (02/28)
- demo/fit.dem: オプション列の errorbar 用の修正 (02/28)
- demo/plugin/*: import 用のサンプルテンプレートの追加 (02/27, 03/01, 03/03)
- demo/fit.dem: fit の errors オプション用の修正 (02/27)
ちょっと報告に間があいてしまいましたが、 新しい機能や大きな変更がいくつかあります。
- enhanced モードで Bold, Italic 指定の追加 (03/09, 03/10)
- ビットシフト演算 <<, >> のサポート (03/09)
- fit のパラメータ間の共分散を変数 FIT_COV_*_* に保存 (03/09)
- timestamp の文字色を変更できるように (03/08)
- 色名の代わりに直接 16 進定数を指定できるように (03/07)
- 古くなった gnuplot-mode (lisp/*) の削除 (03/06)
- 極座標モードで '+' が使えるように (03/04)
- qt: マウス座標の表示位置を選択可能に (03/02)
- 外部共有ライブラリの関数を取り込む import コマンドの新設 (02/27, 02/28)
- fit のオプション noerrors/zerror の新設 (02/27)
- stat のいくつかの変数追加と計算ルーチンの改良 (02/26, 03/07)
- smooth の unwrap オプションの新設 (01/30)
最近は研究室の OS の更新作業などに時間が取られていて、 いずれも全くテストできていません。 説明が必要そうなものについて、 ドキュメントからわかることを少し紹介します (いずれも実際に試したわけではありません)。
smooth の unwrap オプションは、 データがラジアンでの角度を表しているとみなし、 連続するデータ間にπより大きなジャンプがないように 2πの整数倍を適宜加える操作を行います。 これは例えば時刻のように、 データ値に巻き戻しのようなものがある場合に便利で、 0:00 を挟んでジャンプせずに連続的なグラフにしたりするのに使えます。
stat で参照できる計算結果には以下のようなものが追加されました。
- STATS_adev : データ点の平均絶対偏差
- STATS_skewness : 範囲内のデータ点の歪度
- STATS_kurtosis : 範囲内のデータ点の過剰尖度
- STATS_mean_err : 平均値の標準誤差
- STATS_stddev_err : 標準偏差の標準誤差
- STATS_skewness_err : 歪度の標準誤差
- STATS_kurtosis_err : 過剰尖度の標準誤差
- STATS_slope_err : 回帰直線の傾き A の不確かさ
- STATS_intercept_err : 回帰直線の切片 B の不確かさ
また、分散の計算は桁落ちが起きにくい 2 パスの計算に修正されました。
fit には、{noerrors | zerror} (errors z と同じ) のオプションが追加され、using 指定する最後の列をデータの標準偏差として 重み計算に使用するように改良されました。 これにともない、using 指定の値の意味が少し変わっていますので 注意してください。
新しいコマンド「import」はかなり大きな機能で、 外部共有ライブラリ (mylib.so や mylib.dll) で定義された関数を gnuplot 内で使用するための仕組み (プラグイン機構) を提供します。 以下のように使います。
import myfun(x) from "/path/mylib"
/path/mylib.so (か /path/mylib.dll) で定義されている myfun という関数を gnuplot 内で使えるように定義import myfun2(x,y,z) from "/path/mylib:fun2"
/path/mylib.so (か /path/mylib.dll) で定義されている fun2 という関数を gnuplot 内で myfun2() という名前で定義
gnuplot ではかなり多くの関数が使えるようになってきていますが、 これにより自分で多くの関数が容易に追加できるようになりました。 「Gnuplot Q&A 掲示板」 の 2708, 2709 番の記事でも触れられていますが、 GNU gsl など、ちまたにある多くの数学ライブラリの関数を gnuplot に取り込むことが可能になります。 ただ、gnuplot の関数の型の特殊性により、 標準的な C 言語外部ライブラリをそのまま使えるわけではなく、 gnuplot 用に書き直す (そのライブラリから gnuplot で使うための仲立ちライブラリを作る) 必要はあります。 gnuplot で利用できる関数を含む外部ライブラリを書くためのサンプルが demo/plugin/* に用意されています。
色名の代わりの直接 16 進定数の指定は、例えば 「plot sin(x) linecolor rgb "0xFFAABB"」 のように書けるようになったということです。 rgbcolor, tc rgb などの指定も同様です。
fit のパラメータ間の共分散の保存は、
例えばパラメータ a と b に対しては、
自動的に変数 FIT_COV_a_b という名前で
その共分散の値が保存されるようになりました。
Bold, Italic の指定については、最初は LaTeX 風に \bf, \it で
{\it italic-text} {/Times=12 \bf boldface-text}
{/Times=12:Bold:Italic bold-italic-text} {/:Bold bold-text}
{/:Italic bold-text_{/:Normal normal-text}}
(cf. 「情報やメモ (04/28 2014)」)
02/26 位に gnuplot-4.6.5 がリリースされました。 配布物に含まれる NEWS には、以下のように書かれています。
- 新規: 単調な 3 次スプライン補間 "smooth mcsplines"
- 新規: 回転分の跳躍を削除するフィルタ "smooth unwrap"
- 新規: 疑似ファイル '+' で 2 次元媒介変数 t サンプリングを可能に
- 新規: 疑似ファイル '++' で 3 次元媒介変数 u/v サンプリングを可能に
- 新規: 出力形式 "sixel" ドライバ
- 新規: object の新しい属性 clip/noclip
- 変更: using 指定列の最大個数を 7 から 11 に
- 変更: bitmap.c の非商用使用ライセンスのコードをその制限がないものに
- 修正: `set pm3d` の interpolate と top/bottom オプションが共存できるように
- 修正: maxcolors を指定した定義済みパレットの処理を改良
- 修正: "gnuplot -" で対話セッションエラー後に通常のように連続するように
- 修正: タブ区切りデータの最初の列が空の場合正しく無視されていなかった問題
- 修正: 等高線への色の割り当てのいくつかの問題
- 修正: qt 出力形式の線種 (点線/破線) の変更が線色に合っていなかった問題
- 修正: "pause mouse" が右/中ボタンのみ機能し左クリックはだめだった問題
- 修正: emf 出力形式のフォントの初期化
- 修正: wxt 出力形式の拡張文字列の垂直方向のセンタリング
- 修正: win 出力形式の多角形の塗り潰しのバグ
- 修正: パラメータ関数描画での繰り返し
- 修正: 極座標描画の自動縮尺
- 修正: xticlabel の配置の精度を単精度から倍精度に
- 修正: ある csv ファイルに影響するアロケーションエラー
多少 CVS 版でも見られる変更などが取り入れられていますが、 それほど大きな変更はありません。 媒介変数モードでの疑似ファイルの利用や、 object の clip/noclip などは割りと大きなものかもしれません。
ところで、4.6.5 のアナウンス ( http://www.gnuplot.info/announce_4.6.5.txt) を見て気がついたのですが、現在の CVS 版を引き継ぐ 新たなメジャーバージョンアップは、4.8.0 ではなく、 5.0 になるようですね。 個人的には、中かっこによるブロック化と do for, while をサポートし、 Windows 版インストーラも出だして日本語化も楽になった 4.6.0 が結構インパクトがあったので、 むしろそちらの方が「5」にふさわしかったのではとも思います。
ただ、私が最初に gnuplot を知ってから既に 20 年以上たちますが、 今でもボランティアが継続して地道に進化させ続けていることは すばらしいことだと思います。 それだけ gnuplot の基本的な考え方が優れていて、 多くの人に愛されてきた、 ということを意味しているのではないかと思います。
前回の報告 (12/27 2013)以後、 現在の CVS 版に入れられた主な機能について紹介します (ChangeLog, manual の更新部分等より)。
- 一般的な機能
- ticlabels の精度と文字列処理に関する修正 (01/27)
- 分数秒処理に関する改良 (01/27)
- 大域変数 GPVAL_LINENO (= スクリプトの終了行番号) の新設 (01/14)
- plot のデータ先頭の数行をスキップするキーワード skip の新設 (01/14)
- set コマンドのパラメータ処理に関する修正 (01/13)
- splot でも x2, y2 軸ラベルを set view map 時には有効に (01/12)
- set link で片方向しか指定しない場合の問題の修正 (01/12)
- parametric モードでの for による繰り返しでの問題の修正 (01/10)
- 3 次元 parametric モードで u,v に対して '++' が使えるように (01/10)
- set table の際に "with table" が使えるように (01/09)
- circle の key の凡例でのクリッピングに関する問題の修正 (01/03)
- parametric モードで疑似ファイル '+' が使えるように (01/03)
- 軸のラベルの初期化、向きに関する問題の修正 (12/29)
- call の引数を $0 ~ $N から変数 ARG0 ~ ARGN に変更 (12/28)
- notitle に関する最近の変更に関する修正 (12/27)
- terminal ドライバ
- qt: gnuplot へのコマンド送信部分の改良 (01/26)
- qt: 大量のフォントの変更の処理に対応した改良 (01/26)
- caca: libcaca を利用する caca 出力形式の新設 (01/18)
- qt: Qt の初期化のスピードアップのためのフォント処理の改良 (01/18, 01/21)
- qt: ヘッダファイルとコードの整理 (01/18)
- qt: 複数の描画に対する番号付けの改良 (01/16)
- win: 点の記号描画の高速化 (01/11)
- win: gnuplot に Shift-Tab を再割り当て (01/04)
- win: Ctrl-C 処理ルーチンの改良 (Ctrl-C (gnuplot), Ctrl-Break (wgnuplot) でスクリプトなどを中断できるように) (01/04)
- win: GDI+ API を利用した描画処理の高速化等の改良 (01/04)
- qt: ソースを Qt のガイドラインに従って修正 (01/02)
- win: fit での Ctrl-C に関する修正 (01/01)
- win: 内部座標のアスペクト比に関する修正 (01/01)
- win: 組込み readline の Shift-Tab のサイクルに関する修正 (01/01)
- win: 多角形の内部の塗り潰しに関するバグの修正 (12/29)
- win: multiplot のレイヤに関する修正 (12/27)
- win: modify_plots() の win terminal での実装 (12/27)
- win: 64bit Windows 用の修正 (12/27)
- その他
- Windows 用インストーラの OS を XP 以降に仮定 (01/11)
- Windows MinGW 環境でのコンパイル環境等の修正 (01/11)
- Windows/MSVC 用の qt 用の Makefile の修正 (01/08)
- configure の --enable-backwards-compatibility オプションを復活し いくつかの古い機能 (call の $0 ~ $N, thru, set style increment user) をそちらに移行 (12/28)
- MinGW でのコンパイル環境に関する修正 (12/28)
- デモ
- timedat.dem: 時間軸のミリ秒精度のデモの追加 (01/28)
- autoscale.dem: reset の追加 (01/17)
- param.dem: parametric モードでの '++' のテストの追加 (01/11)
- callargs.dem: GPVAL_LINENO を使った書き換え (01/15)
- clipobject.dem: 変数の消去の追加 (01/13)
- complex_trig.dem: y2 の設定の修正 (01/13)
- datastrings.dem: reset の追加 (01/13)
- callargs.dem: 古い引数系のテストの追加 (01/12)
- callargs.dem: call の引数の変更に対するデモ (12/28)
今回は、win terminal, qt terminal の修正がかなりありますが、 それよりも大きな変更がいくつかあります。
- call の引数を $0 ~ $N から変数 ARG0 ~ ARGN に変更 (12/28)
- parametric モードで疑似ファイル '+', '++' (3D) が使えるように (01/03, 01/10)
- set table の際に "with table" が使えるように (01/09)
- splot でも x2, y2 軸ラベルを set view map 時には有効に (01/12)
- 大域変数 GPVAL_LINENO (= スクリプトの終了行番号) の新設 (01/14)
- plot のデータ先頭の数行をスキップするキーワード skip の新設 (01/14)
- caca: libcaca を利用する caca 出力形式の新設 (01/18)
まず、call の仕様の変更はかなり大きいです。 従来は、call に与えた引数は $0 ~ $N というもので利用していましたが、 この名前のため、および「変数」としての立場が不十分なため、 いくつか副作用がありました。 それを、ハッキリ「文字列変数」として ARG0 ~ ARGN (引数の個数は ARGC) を使うようになりましたので、 スクリプトを変更しないといけないかもしれませんが、 それによる恩恵は大きいと思います。 ARG0 等は文字列変数なので、マクロ展開も可能です。 マニュアルには、例えば以下のような例が書いてあります:
call スクリプトを
plot @ARG1 with lines title ARG3
print ARG2 * 4.56, @ARG2 * 4.56
print "This plot produced by script ", ARG0
MYFILE = "script1.gp"
FUNC = "sin(x)"
call MYFILE FUNC 1.23 "This is a plot title"
plot sin(x) with lines title "This is a plot title"
print 1.23 * 4.56, 1.23 * 4.56
print "This plot produced by script ", "script1.gp"
parametric モードで '+', '++' が使えるようになったのも大きな変更です。 関数式描画はサポートしておらず、 データ描画にしか使えないような機能はいくつかありますが、 これによりそれが parametric モードでも利用できるようになります。
set table の「with table」というのは、 table 出力がその時点の描画スタイルに影響を受けてしまうことを 避けるためのもののようです。 with table と明示することにより、 現在の描画スタイルとは無関係に正しく table 出力が行えるようになります (多分)。
gnuplot スクリプトの終了行番号を GPVAL_LINENO で取得できるようにしたのは主にデバッグ用でしょうか。
キーワード skip は、バイナリデータ用のものはありましたが、 今回テキストデータ用にも新設されました。 指定した数だけ、データの先頭行を読み飛ばします。 ヘッダがついているデータを処理する場合に有用です。 なお、「every ::N」でも似たようなことができますが、 「skip N」で読み飛ばした行は every の処理ではカウントされませんし、 「every ::N」だと各データブロックのすべての先頭を読みとばしてしまいます。
最後に、caca terminal という奇妙な出力形式が新設されました。 これは、いわゆるアスキーアートによってグラフを書く libcaca を使った出力で、 一応対話型出力形式になります。 似たものとして、dumb terminal がありますが、 caca terminal では色が使えますし、 実は gnuplot の機能を「フル」にサポートしていて、 例えば 3D グラフをマウスで回転させたり、 hypertext 機能なんかも使えたりします。
libcaca には「バックエンド」と呼ばれるシステムがあり、 それを切り替えて使うこともできるます。 例えばうちにインストールした libcaca だと、 x11, ncurses 等のバックエンドが利用可能なようです。 私もよく把握していないので、 詳しくはマニュアルを参照して頂きたいと思いますが、 demo にあるサンプルなどをいくつか紹介します。
まずは、何はともあれ test の出力から。 比較のため、wxt terminal の出力と並べます。
- caca terminal の test コマンドの出力
- wxt terminal の test コマンドの出力
それなりに頑張っていることがよくわかると思います。
また、容易に想像できると思いますが、細かいグラフや、 3 次元の格子による曲面グラフはあまり得意ではなく、 何が描かれているかほとんどわからなくなります。 以下は surface1.dem にある 3 次元の Sinc 関数のグラフです。
- caca terminal での 3 次元 Sinc 関数のグラフ
- wxt terminal での 3 次元 Sinc 関数のグラフ
正直なところ、いい角度から見ないと、 曲面なのかどうかもよくわかりません。
一方で、長方形の塗り潰しなどはしっかり書けますし、 色もちゃんと使えますので、ヒストグラム、boxplot、candlesticks、 および 3 次元の pm3d グラフの 2 次元投影図 (set view map) などはかなりしっかり書くことができます。
- caca term での積み上げ型ヒストグラム (histogram.dem より)
- wxt term での積み上げ型ヒストグラム (histogram.dem より)
- pm3d.dem の pm3d 曲面の 2 次元射影図 (caca term)
- pm3d.dem の pm3d 曲面の 2 次元射影図 (wxt term)
これらはかなりいい線いっていることがわかると思います。
なお、画面のサイズを変更するには、x11 バックエンドでは set term の size オプションではうまくいかず、 環境変数の CACA_GEOMETRY を使うか、 マウスで描画ウィンドウをリサイズした後で再び 「set term caca」と呼び出すことで変更します。
- デフォルトサイズの 80x25 (set term caca; plot sin(x))
- CACA_GEOMETRY=60x60 の場合
なお、caca ではASCII 文字の大きさが単位なので、 60x60 で正方形になるわけではなく、 これだとむしろ 1:2 くらいのサイズになります。
実用性がそれほどあるとは思えませんが、 もしかすると解像度の低い携帯端末だとか、 CPU 性能の低い古いコンピュータなどでは それなりに意味があるのかもしれませんね。
(cf. 「情報やメモ (03/14 2014)」)